悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
「他に気を取られている場合ではないですね。貴重なミッシェル様の姿を目に焼き付けますよ」

「はいっ、クラーク様!」

(そうだよね、考え事はあとで!)

アメリアは、それが『婚約者のエリオット』ことであり、クラークが己の欲望中心で言わなかったことを勘ぐることはなかった。



◆§◆§◆



その一方、同じ王宮の別場所で。

「アメリアが、捕まらん…!」

軍部の演習の打ち合わせのため会議室入りしたころで、エリオットがテーブルに手をつく。

婚約したのち、彼女と両想いになった。

しかし、ハッピーエンドとはなかなかいかないみたいだ。それを痛感させられた気がした。

「アメリアが来ているんだよな? 時間の合間に探しているというのに、全く姿さえ見付けられないとはっ」

そばで資料の準備にとりかかっている補佐官達は、すっと目をそらす。

「目撃情報はかなり上がってくるのにな……」

「何をしているんだろうな。半ば走って移動されていたとか?」

「ロバート様の高笑いが聞こえてきそう」

囁きを交わした彼らが、最後は揃って頷く。

アメリアの動いている〝理由〟は分かっている。

部下の私語を叱ってもいいが、エリオットにそんな余裕はない。またミッシェルかと再び呻いてしまう。

「俺は『アメリアの好きな婚約者』なんだよな? ファンだとかいうミッシェル嬢のことを前にして忘れられていたらと思うと……ゾッとする」

エリオットは、好き過ぎて自信がなくなっていた。

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