悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
二章 アメリア・クラレンスの妃教育
本日から、王弟妃教育が始まる。
近衛騎士隊長であるクラークが、第二王子エリオットの婚約者であるアメリアの護衛騎士として就いた。
「普段も一緒にいることが多いので、なんか変な感じですね」
廊下を歩きながら、隣のクラークを見上げる。
「そうですかね。いつもは都合を付けての合間に、という感じでしたが」
彼は顎を撫でて呟く。
「まぁ、これからは仕事でも気兼ねなく同行可能と考えればよいのですよ。私の行動は、お前の希望などが最優先されますから」
「お仕事の方は大丈夫なんですか?」
「一部は引き継ぎなども済ませてあります。護衛騎士が臨機応変に対応できないのは、問題です」
そういうものであるらしい。
午前中の王宮中央は、人の行き来も落ち着いていた。事務官達も各持ち場に就いているのだろう。
アメリアは今、授業場所に指定された部屋とは別方向に歩いていた。
【時間があるので、授業前に少し立ち寄ってくれないか】
そうエリオットから伝言をもらったのだ。
「心配になったのかしら? わざわざ講師の方にも言って、急きょ時間を取ってもらうなんて」
「――まぁ、可能性としては一つ浮かびますがね」
クラークが、よそへ目を向けて口にした。
「それはどんなことですか?」
「それが思い浮かばないのも、少し殿下に同情しますね」