悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
なんの?と思った時、第二王子の執務室が目に入った。扉の前には、警備が二人付いている。

「アメリア嬢、お待ちしておりました。どうぞ」

扉の前に立っていた騎士達が、開いて入室を促す。

(なんだか、どきどきしてきたわ)

アメリアは騒ぎ出した胸に手をあてた。密かに深呼吸してから、クラークを従えとそろそろと足を進める。

室内には事務官の他、彼が持つ部隊の部下らしき者たちもいた。気にしないよう作業を進める彼らの中、すぐ長椅子から立ち上がる人がいた。

婚約者の第二王子、エリオット・フォン・ウィルアベルだ。

意思の強い魅力的な紺色の瞳と、日差しにきらきらとする金髪を持った絶世の美男子だ。

生真面目な表情が似合うのに魅力的な色気までまとった彼は、ゲームのメインヒーローだ。ゲームヒロインのソフィアと恋に落ちることもなく、悪役令嬢であるアメリアを選んでくれた。

(――男性で、初めて私の〝推し〟になった人)

ミッシェルとはまた違う胸のときめきを覚えるのは、それが理由だ。

おかげでアメリアは、改めて会うといつも照れ臭くなる。エリオットの愛の告白を安心して受け入れた日から、どきどきは止まらない。

(そんなに時間が経っていないせいもあるかも?)

マティウスとミッシェルが告白をし合った舞踏会の日から、まだ一週間と少ししか経っていない。

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