悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
そんなことを考えて恥じらっていると、溜息が聞こえた。

「……アメリア、いい加減俺のところに落ちてきてくれないだろうか」

向かってくるエリオットが、なぜか疲労困憊気味といった様子で髪を撫で上げている。

アメリアはきょとんとして、少し考えた。

(あ。もしかして……)

自分を好きになってくれた人。

だというのに、ついミッシェルに夢中になっていた自覚はある。彼を放っておいてしまっていた。

「……落ちるも何も。私、エリオット様が好きだと言ったじゃない」

言葉遣いだって、こちらの方がいいと言ってくれた。だから努力はしている。

恥じらいつつも言葉を紡ぐと、すぐそこまで来たエリオットがアメリアの手を取った。

「それでも足りないんだ。もっと言われたい」

そう言って、彼がじっと覗き込む。

ストレートに言われて顔が熱くなった。

真面目な顔で、なんてことを言う人だろう。何気ない視線だけでアメリアの胸を高鳴らせるなんて、彼は思いもしていないのかもしれない。

前世を含めて、アメリアは初めて恋をしたのだ。

その相手は、あの頃無自覚にも、顔にも声にも惚れてしまった男性だった。

「そ、その、努力はするわ。……だからひねくれないで」

見つめられている恥ずかしさがピークに達したアメリアは、無理やり彼の手を引っぱった。

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