悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
そのあと、アメリアはエリオットの元に嫁ぐ。家を離れて、王宮での暮らしが始まる――。

(王弟妃教育が終わる頃には、日取りも決まっているのかしら)

幸せだけど、心配なのは、彼が愛情表現をどんどんしてくることだ。

そんなことを思った時、手を握られて心臓がはねた。

覚えがある空気だ。部下だけでなく、護衛騎士としてクラークもいるので余計に緊張してしまう。

「久しぶりに会えたんだ。仕事の前に、アメリアを補給しておきたい」

隣の彼を上目遣いに見つめ返してすぐ、甘く微笑みかけられる。

「俺のことを忘れられたくないしな」

「えと、その、完全に忘れていたわけでは……」

「おいで、アメリア」

エリオットが優しく手を引き、もう一つの腕を広げる。

もう、何度もされたことだ。

恥ずかしさにためらったものの、アメリアは手をつなぎ合わせたまま彼の膝の上に座った。

自分のせいでひねくれさせてしまった彼を思うと断れない。尻と太腿の下に感じる逞しい男性の体温にどきどきが急上昇する。

「いいな。素直に甘えさせてくれるのが、また一層愛らしい」

満足げにチェリーピンクの髪を指で梳く。

彼の大きな手が頭に触れると、その温もりだけで肩がはねそうになる。それをわかっているはずなのに、エリオットは悠々とアメリアを撫でるのだ。

(クラーク様もいる前なのに、恥ずかしい……)

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