悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
「お前、ミッシェル様の父親もファンなのですか?」

「高貴なる令嬢の父親として、彼女をこの世に生み出した彼を尊敬しています!」

「なるほど、合点がいきました」

隣で生真面目で頷くのは、二十歳で近衛騎士隊長クラーク・バトスだ。軍の中では珍しい、細い眼鏡をかけた絶世の美男子である。

彼はアメリアと共に奮闘した〝推し仲間の同志〟である。

王弟妃教育が始まる日から、護衛騎士になることも確定していた。

本日、アメリアは会えないミッシェルの様子を目に収めるべく、クラークとわざわざ待ち合わせて鑑賞に乗り出していたのだ。

アメリアは、ゲームになかった推しのハッピーエンドが見られたことに興奮していた。そして、今まさに、ゲームのシナリオにない展開を目に収めていることに、変態的な鼻息を上げて歓喜している。

「最高! 幸せだわっ! これから私の推し活パッピーライフが始まるのね!」

滅亡フラグもないアメリア自身の人生が開けたわけである。

彼女は、全てから解放されたような幸せな気分を味わっていた。



それもそのはず。

社交が休みに突入したことで一層観察し放題になっていたアメリアは、とある人のことなど、頭の中から綺麗さっぱり吹っ飛んでいたからだった。



◆§◆§◆



その一方――。

彼女の婚約者で、噂の弟王子ことエリオットは、正反対の重々しい空気を放って業務にあたっていた。

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