悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
あまり覚えていないのは、どうしてなのだろう。

またしても、そんなことを考えてしまう。

(今のアメリアと比べて、もっと悲しくなっちゃったりするせいかな?)

それとも〝早く置いてきてしまったこと〟を、後悔するせいか。

またしても、胸がチクリとする。

「アメリア」

名前を呼ばれて、ハッとさせられた。

『※※※』

一瞬、前世の記憶の〝何か〟に重なりかけた気がした。

ぱっと振り返ると、そこには真顔のクラークがいた。彼が、軽く指を向こうへと差し向ける。

「ヴァレンティーナ嬢がご所望のようです」

「えっ。あ、そうでしたっ」

いつまで待たせるのと、結局はヴァレンティーナに叱られてしまったけれど――アメリアは、今度は四人でハイタッチをし直したのだった。



◆§◆§◆



それから少し経った頃。

クラークは王宮の最上階にある、とある場所の廊下を歩いていた。

王族と軍部上層部、一部関係者のみが入場を許された場所だ。

とても静かな所だった。少し前までは気にならなかったが、閉められた窓の向こうを見て、ふと感想を抱く。

「……少々、静かすぎるな」

そう思ってしまうのは、数時間前まで共にいたアメリアのせいか。

「おー、よく来たな!」

騒がしい声が聞こえた。つられて目を向けると、マントを揺らして屈強な大男が向かってくる。

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