悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
「第二王子が結婚次第、お前が近衛騎士隊の総指揮まで持つのが確定したとはなぁ。随分出世したもんだよ」

クラークが廊下の中央で落ち合ったのは、ハワード騎士団長だ。

彼は、各騎士団の中で最多の勲章を持つ男だった。全騎士団の采配を振れる立ち位置にもいた。

「あなたと世間話をしに来たのではないのですが」

「呼び出しといてなんて冷たいんだ……副隊長だった時から、ほんと可愛くない……」

「指導していただいた御恩は覚えていますよ。いつか返します」

「その目、そうは見えねぇんだよな~……はぁ」

大柄な男に溜息を吐かれても、情なんて誘われない。

(いつものことですが――この目を気にしない者もいるのですよね)

十五歳の伯爵令嬢、アメリア・クラレンス。

彼女はクラークの目を見て、感じ取れることがあるみたいに応える時がある。先程もそうだった。

『ありがとうございますクラーク様!』

提案した彼の目を見て、アメリアは喜びを表現した。勝手に色々と解釈するところがある――が、どれもプラスの感情面だ。

でも、間違ってはいない。

そう真っすぐ汲み取れるのは、彼女が優しい人間だからだろうとクラークは思う。

(私は、優しい人ではない)

周りの意見を耳にするに、たぶんそうだろうと思っている。

< 68 / 202 >

この作品をシェア

pagetop