悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
ただ、アメリアと出会ってから、もしかしたら違うのかなとも思えことがある。彼女には『優しく』できている気がした。

感情面には疎いので、よく分からないことではあった。

そんなこと、クラークはこれまで気にしたこともなかった。

「ところで、本題の前にいいか?」

「なんでしょう?」

ハワード騎士団長に目を戻すと、大男なのにもじもじしていた。

大変気持ちが悪い。クラークは、眼鏡越しの目がぐうっと細める。

「気持ち悪いのでさっさとおっしゃってください」

「おい、それは口に出さないはずの感想じゃないのか?」

「私は正直者なのです。我慢するくらいなら、即発散します」

「あーあーっ、お前はそういうやつだよまったく! ああ言ったらこう言うんだからなぁ!」

耳を押さえて頭を振る。

相変わらず言い分だけでなく、態度もやかましい上官だ。クラークの方こそ、咄嗟に両耳を押さえてしまった。

「そうじゃなくてだな。俺は大変気になっていることがあって……」

「だから、なんです?」

「そのぉ……お前さ、第二王子殿下の婚約者様を、本気で狙っているわけではないよな?」

随分お門違いな質問がきた。

「違いますが」

クラークは元指導教官の目を見て、淡々と即答した。

「……あのさ、救いようのない部下を見る時の目はやめて」

「なぜそのような質問をされたのか理解できません」

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