悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
エリオットは、緊張感が途端にゆるゆるになった部下たちよりも、ロバートの高笑いの方に歯をぎりぎりとする。

(そう、問題は『ファン』だとか言う、あの二人だ)

それは婚約者のアメリアと、護衛騎士に決まったクラークだ。

婚約者なのに、エリオットはこの数日アメリアの動向さえつかめていない。

アメリアから、いい反応をもらえるようになった。胸をときめかせてくれるようになった。

ミッシェルと兄の結婚が確定すれば、彼女は心おきなくエリオットにめろめろになる――と考えていたのに、予想が外れた。

(くそぉ、行動範囲がまるで予測不能だ!)

テーブルに手を打ち付けたい気持ちを、懸命にこらえる。

アメリアは、ミッシェルの猛烈な『ファン』だ。そこに近衛騎士隊長のクラークが加わっているものだから、余計面倒なことになっていた。

彼が同行していると、王宮内のほとんどの場所は出入りできる。

(今の二人は、まさに相思相愛。なのになぜ会えないのか)

彼女の中の優先順位的に、いまだ女性であるミッシェルにいちいち負けている気がしている。

王弟妃教育の日程の決定を知らされた際に、一緒にお茶をした。

だがそのあと、アメリアとまったく会えていない。

「あれから四日……、もしや俺、忘れられてないか?」

エリオットは、思わず近くにいた部下に尋ねた。

彼がそのような弱気発言をするのも珍しい。最年長の部下は目を丸くしたのち、苦笑を浮かべた。

「まさか。そんなことはございませんよ」

既婚者である彼は、そう言ってエリオットを励ました。



――だがしかし、それは合っているのだった。



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