悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
「まぁ、それは俺も知ってるよ。王子が武力と領土を持って、過去には兄弟同士で何度も争って国名がばんばん変わった歴史もある」

「本来〝王位継承者が確定するまで自国から出ない〟のも特徴でした」

「……あ? そう、だったか?」

はて、とハワード騎士団長は武骨な顎を撫でる。

「昔のように公にはされていない、という点でも事実所が気になっています。ですので引き続き調べていただきたい」

クラークの視線を受け止め、ハワード騎士団長の表情が引き締まる。

「それ国の王子が初来国のうえ、急きょ接近しているのが怪しいんだな? 分かった、やろう。だが、あとでちゃんと詳しく共有してくれよ?」

「私の方の調べ物が済みましたら、その時には、すぐにでも」

クラークは思案気に視線を流した。

たしかなことでなければ混乱させることは言わない男だ。ハワード騎士団長もそれを知っていて、尋ねることはやめる。

話し合いは以上だ。二人が無言のまま別れようといた時――。

「ああ、少々お待ちいただきたい、ハワード騎士団長」

クラークの方が呼び止めた。

「なんだよ、お前から仕事以外の話を聞かされるのは珍しいな?」

「一つ確認したいことが――あなたの弟子でもあるギリリク隊長、斬り殺してもいいですか?」

ハワード騎士団長の頬が、ひくっと引き攣った。

「……それを俺が許可すると思ってんの? というか、ギリリク隊長お前になんかしたの? あいつ、勤勉で真面目でいい奴じゃん」

彼は困惑を隠しきれなかった。

知らぬ間に怨みを買っている、ということを当のギリリク隊長もいまだ知らないでいた。


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