悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
一人称の変化はやはり気にもせず、彼がにっこりと笑って自分を指差した。

「私はお喋りに時間を割くつもりはありませんけど。忙しいのです」

「婚約者としての社交? ふうん、大変だね」

そのへんも興味がなさそうだ。

こうして、ルカがここにいるのは想定外のことだった。最後の授業が終わって通路を出た先で、声をかけられたのだ。

クラークを連れているのに、接触されるとは思っていなかったから驚いた。

(どうやら待っていたらしいのよね……)

人の出入りを制限していた警備の男たちも、鼻歌を歌っている第五王子の『待機』には戸惑っていたようだった。

「朝話せなかったんだから、少しくらいお喋りのタイミングを見付けてもいいだろ?」

「……ん? ということは、私が来た時も見える場所にいたんですか?」

まさかと思って振り返ると、彼がすぐ答える。

「そうだよ? その護衛騎士が出迎えてたから、いったん見送ったんだ」

なのになぜ、今来たのか。

アメリアがそう思っていると、彼よりも高い位置にある顔に視線を受け止めたクラークが、「ほぉ」と単調な声をもらした。

「つまりあなた様は、私がいるので様子見することにした、と。それでは、どうして今はいらしたのですか?」

ナイスな質問だ、さすがはクラークである。

「しばらく護衛がそばから離れないのかなと推測したから、突撃することにした」

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