悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
上目遣いに見たことを、友好と勝手に取られてしまったのか。一割増の笑顔と共に気軽に誘われて、アメリアはむっとする。

「婚約者でもないのに、そんなことしませんわ」

「隣はだめ? 残念だな。なら、向かい側に座るよ」

異性と二人の相席自体がよろしくない。

そう分かっていながら誘っているルカに、アメリアは胸がざわざわした。

「私が見ている前で、そんなことはさせられませんが」

顎を撫でつつ、彼を見下ろしてクラークが言う。

「ああ、やっぱり止める? ふうん、エリオット殿下から寄越されてる護衛だもんな?」

ルカは光が見えたような笑みを浮かべた。

普通、反応が逆な気がする。婚約者が心配して護衛を付けた、と勘ぐったうえでなぜ笑うのか?

やはり、アメリアはなんだかもやもやした。

「私が二人きりで座る場合は、エリオット様だけですわ」

ぴしゃりと告げた。苛々して、チェリーピンクの髪を手で払い、毅然と前を向いて歩く速度を上げる。

「それに、あなた様とそんなことをしている暇はありません。付いてくるのなら、勝手にすればいいですわ――そう、私たちには使命があるのです!」

「は……?」

ルカが「使命?」と呟く。

口にしたら、推しの存在のおかげで胸の居心地の悪さも押し出された。そうだ、アメリアは彼に構っている場合ではないのだ。

堂々前を見据える彼女の横に、クラークが並んだ。

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