悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
「その通りです。心の準備はいいですか?」

「ばっちりです! サポートは任せましたからねっ」

「任せなさい。お前が話す際に、完璧にあのお方に華を添えます」

アメリアが前を向いたまま片手を上げると、そこにクラークが軽く掌を押し付け返した。

ハイタッチ、片手バージョンだ。

(よし、やるわよ――)

地道な推し活、開始だ。

「ちょ、待てよっ。俺も付き合うに決まってるだろっ」

振り返りもしないアメリアとクラークを、ルカが慌てて追い駆けた。



そして、少し経った頃。

「……なぁ、さっきから何してんの? ミッシェル嬢の社交の代行?」

アメリアの行動がようやく止まったところで、ルカが低テンションな声をひっそりと上げた。

飽きたか、移動続きで疲れたと言わんばかりの顔をしている。

「代行、ではありませんけれど。ミッシェル様関連だとよく気付きましたわね」

「話の間々に、ミッシェル嬢の名前と話題が出てくることを繰り返されれば、さすがに分かるよ」

指摘されて、たしかにと気付く。

「もう話す貴族はいないよな? というか、全グループ回ったとか信じられねぇ……しかもミッシェル嬢の話題ばかり」

ルカが膝に手をあて、王侯貴族らしくない仕草で溜息を吐いた。

貴族サロンにいた者たちと、どこかのグループを贔屓していると思わせることなく平等な時間で言葉を交わした。

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