悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
アメリアのその社交力には、クラークも褒めていた。そして休むことなく貴族たちの間を渡り歩き、今、出発地点の出入り口まで戻ってきたところだ。

「足くたびれた、面白くない……」

「なら、途中で辞退すればよかったではありませんか」

ほとんど相手にする暇などなかったばかりか、隣国から来ている王子ということもあって、ルカも談笑の巻き沿いを食らっていた。

てっきり、アメリアは退場すると思っていたのだけれど――。

「それは嫌だ」

ルカが急に背筋を伸ばして、またしても引き締まった表情でそう言った。

(できれば、もう帰って欲しいなぁ……)

その気がないようだとわかって、アメリアは悔しいやら鬱陶しいやらと考えてしまう。

するとクラークが、彼に追い打ちをかけるように言った。

「これだけでくたびれられても困ります」

「そうよ、ルカ様。なぜなら次があります――さっ、クラーク様行きましょう!」

アメリアの合図と同時に、クラークも歩き出す。

それを見てルカが飛び上がった。慌てて二人を追う。

「えぇっ! 休憩もせず、今度は何をするんだよ!?」

「別に付いてこなくていいですわよ」

「そうです。貴殿は関係がない」

二人はスタスタと歩く。

「こ、ここまで付き合ったんだから、付いていくに決まってんだろっ」

負けん気に火でもついたみたいに、ルカが後を追ってきた。

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