悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
王子なのに、『失礼だぞ』だとか『無礼だぞ』と非難しない。二人に追いつくと、並んで進行方向に続く。

(……根は悪くない、のかな?)

アメリアの目には少し、不思議に写った。

それから、王宮内をクラークの案内で無駄なく移動した。

そののち三人の姿は、中庭を囲む廊下の影にあった。

アメリアは廊下沿いにかかる鑑賞植物の頭にクラークと身を隠し、庭の方を覗き込んでいる。

そこは『ミッシェル観察用』として、新たに発掘したストーキングポットだ。

二人は身を潜め、ただひたすらじっと真面目な顔で向こうを見つめる。

「……なぁ、あんたらって、ミッシェル嬢の友人? か味方? なんじゃねぇの。なんでこっそり見てるわけ?」

二人に付き合って隠れているルカが、ようやく疑問の声を上げる。

中庭には、次の場所へ向かいがてら歩いているミッシェルとマティウスの姿があった。ゆっくりと歩きながら、談笑を楽しんでいる。

もちろん警備は万全だ。

周りに配置された騎士たちは、急にやってきたクラークの方を、できるだけ見ないようにしている。

「私たちの知らないプライベートなミッシェル様を眺めることもっ、生き甲斐なのです!」

アメリアは興奮した顔を向けて、手をぶんぶん上下に振る。

「……よく分からねぇなぁ」

クラークが頷くのを見たものの、ルカがゆっくり首を捻り直す。

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