悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
混乱しているルカと同じく、聞き耳を立てている警備の者たちも、迷宮に突き落とされたような顔をしている。

「なんでそこで『刺客』が出てくるのですか。物騒ですね」

アメリアは、今度のジョークには笑ってあげた。

するとルカが、これまでにない慌てっぷりを見せた。

「あ、いや、別に俺は――」

「馬車に乗る予定の時間を遅らせられるのは、一時間なんです。それまでがタイムリミットだから急がないとっ」

アメリアはスカートを持ち上げ、廊下を疾走した。

「――って、また行くのかよおおおお!?」

彼女にクラークが続く。ルカが色々と文句を言いながら、廊下に声を響かせて二人を追った。

「というかっ、行動力ありすぎねぇかっ」

「彼女はいつもこうですよ。体力がないと思いきや、推し活になると底力を見せます」

「その『おしかつ』ってなんだよ!?」

ルカが目を向けたが、クラークは涼しげに聞き流した。

人の目がつく通路に出たところで、アメリアはいったんスカートから手を離した。手帳の内容を思い起こす。

「クラーク様、西側の四本目の塔の近くはまだでしたよね?」

「貴族はなかなか行かない場所ですからね。しかし、見ておいて損はないでしょう。見張り台に行くまでの間に、外通路が少し見える場所もありますから」

「どこの外通路が見られるのか、興味がありますねっ」

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