悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
あとになってようやく、この顔と声も彼女の好みになり出していると知った。

アメリアがどんな女性なのか分かったあとだったから、余計に嬉しかった。恰好をつけたいと思って、普段以上に髪型や衣装に気をつけているなんて、エリオットはこれまでの人生で初めての経験でもあった。

今日も、ここへ来る前にすれ違ったメイドに確認してしまった。

『どうだ、変なところはないか?』

彼女たちは目を丸くして、それから微笑んだ。

『いつも通り、とても素敵でございますよ』

温かな眼差しを向けられた時、自分が何をしているのかわかって頬が赤くなりそうになった。

(この俺が、不安になって誰かに見目を確認させるなど)

それにしても、アメリアだ。

エリオットは無理やり考えを戻す。これから角を曲がった先の廊下には、人の目がある。赤面も百面相も晒したくない。

「暴走防止も兼ねてクラークを護衛につけたはずなんだが……より行動範囲を広げる結果になっただけか?」

ストッパーにならないな、と苦々しく思う。

アメリアから結婚に前向きな返事をもらえて、喜びのあまり失念していた。あの二人が〝猛烈なファン〟であるところを考えるべきだった。

クラークほどの立場となると、一般的なクラスの護衛騎士に比べて、行動の融通はかなりきく。

(ミッシェル嬢の様子を見に行ったとしても、管轄は近衛騎士部隊――クラークの権限が及ぶ)

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