悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
心強い男であるのだが、余計にアメリアの行動を助ける結果になっていないか。

今になって、ちらりと不安が頭をよぎる。

エリオットとしては、バゼリリアン王国の第五王子が接触しているのも気になっていた。

バゼリリアン王国は、隣国の一つとして国土が接している強大国である。

自国の独自文化が強く根付き、頻繁な友好は、反対側の大陸部の同系統の軍隊国家に限られる、という特徴も持っていた。

だから今回、そこから第五王子が王家の代表だと来国してきたことは、父である国王たちも喜んでいた。次世代では、もしかしたら氷が解けるように友好な国交が生まれるのではないか、と。

(――そのためにアメリアを差し出せと言われたら、たとえ父だろうが容赦しないがな)

エリオットは、手に固い拳を作った。

通行制限が解除された廊下で、すれ違った高官たちがぴりりとした気配を感じ取ったのか、声を潜めて彼を見送る。

バゼリリアン王国の貴族の結婚事情についても、文化的な風習が強い、という情報だけはあった。

つまるところの、家同士が子の結婚を決める政略結婚が強いのだろう。

王族は、正室の他に側室を迎える。

王が即位時に未婚だった時には『美姫と思う令嬢を』と国に知らせが出され、後宮に面接審査のため大勢の令嬢たちが列をなした――とは、エリオットも話には聞いていた。

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