悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
アメリアとクラークにとっては、推しの尊顔を見られる最高のポジションでもある。

(ああ。近い、鼻血出そう)

アメリアの表情が、へにゃっとだしらなさを滲ませる。

(恋愛でうきうきしているミッシェル様、尊すぎ――)

そんなことを思った時、テーブルの下でこつんと膝があたった。

ハッとした直後、クラークの囁き声が降ってくる。

「お前、表情が大変なことになっていますよ。バレたいのですか、引き締めなさい」

「クラーク様こそ、肩ががちがちになってます」

アメリアは、両ひざの上に置かれた彼の手から上へと視線を滑らせた。目を留めるなり、彼の薄い肩に人差し指を伸ばした。

「立派な令嬢、もとい淑女がつつくんじゃありません」

ミッシェルへ顔を固定したまま、クラークがすんっとなった。

まだ触っていないのにと思いながら、アメリアは指を引っ込めた。生粋の貴族なので、彼はそういったことも細かい。

(恥じらいとか、なんとかいうやつ……?)

先日も言われたような、つい昨日の見守りの会の時にも言われたような。

前世でも恋を知らず、今世で初めて〝男性の推し〟ができた。

いまだ心は無垢さが勝るアメリアは、クラークには異性としてのどきどきを感じないせいで平気、だと気付けないでいた。

「ふふ、仲がいいね。何を話していたんだい?」

「あ。いえ、肩凝りとか」

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