悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
まさかとは思うが、すでに婚約が決まった令嬢を、上の身分の者が横取りできてしまう制度がその国にはある、とは思いたくない。

第五王子ルカは十七歳だ。

アメリアとは、エリオットよりも一歳分年齢も近い。

あの大国で、上から五番目の王位継承者だ。さすがにそれほど国交もない他国で、婚約者がいる令嬢を本気で求めることはない、とは思うのだが――。

「おや、殿下? ここで会うのは珍しいですね」

その時、知った声が聞こえて顔を上げた。

知る者の中で、臆せず軽い調子で話しかけてくる人物は一人しかいない。

目に留めた男は、予想通りアメリアの兄であるロバート・クラレンスだった。

アメリアと婚約したあと、異動を〝自分から〟起こしてエリオットの部下になった男である。

かなりの妹溺愛だ。外見だけ無駄にいいものだから、知らない者には好感しか覚えられていないという得をしている。

柔和な笑みを返してきた彼を、エリオットはふと観察した。

「――そうか。美形を見慣れているのか」

「はい?」

思えば、アメリアは女性たちにかなり騒がれているクラークも平気だった。

ロバートは、黙っていれば女性たちが黄色い声を上げるイケメンだ。喧嘩も知らないような愛嬌を感じる眼差しは、年下の令息たちも『あのような紳士になりたい』と憧れている者が多いと聞く。

(まぁ、家では少し違っているようだが)

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