悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
アメリアとは話す時間を持つようにしているエリオットは、その際に、ロバートが直に芝生へ座ると聞いて意外に思ったものだった。

「いや、なんでもない。気にするな。ああ、ところでアメリアのことで少し聞きたいことがある」

「なんでしょうか?」

すぐロバートの目が輝く。

仕事の命令をした時にも、これくらい前向きに取り組んでくれたら――いや、そんなことは今は思うまい。

エリオットは時間を無駄にしない方向で、現状について手短に説明した。

「はぁ。授業の合間も後もなかなか見掛けない、と」

話を聞いたロバートが、抱えていた書類を脇に置いて「うーん」と考える。癖もあり、目立つチェリーピンクの前髪がさらりと目元にかかっていた。

「何か知っているか?」

「そうですねぇ……あ、そういえば家でも忙しくしていますね。活動が忙しい、とかなんとか?」

やはり〝ファン活動〟か。

エリオット頭が痛くなる。ロバートにとっては、さぞ愉快な状況だろう。彼の妹への溺愛っぷりは、かなり知られている。

だがロバートは、自分が勝ったというようなことは言ってこなかった。

「妹が楽しそうなのは、何よりです」

廊下の向こうの出窓の、明るい陽射しを眺めて目を細める。

彼の判断基準が、よく分からない。

(妹に相手にされないとか、そういうことは今はいいのか?)

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