悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
兄というのは、そういうものなのだろうかとエリオットは首を捻る。

「あ、そうだ。お戻りになられるのなら、僕が途中まで付き合いますよ」

「進行方向は違うようだが」

「あはは、別ルートから行くのも楽しいもんです。殿下もお一人では寂しいでしょう」

寂しい、か。

エリオットは言われ慣れない言葉を、心の中で繰り返す。こんな風に気軽に誘ってくる男というのも、なかなかいない。

「殿下?」

「分かった。途中まで付き合え」

「かしこまりました。喜んで」

ロバートが隣に並び、来た道を戻るようにエリオットと歩き出す。

これまでたくさんの貴族を見てきたが、エリオットにとって、ロバートは不思議な気配がする男でもあった。

交友的で、王族相手だろうが同行提案も平気でする。

(友達作りがなかなかうまくできなかったアメリアにとって、唯一の味方だった兄、か)

友好関係もかなり幅広いが、妹への時間だけは削らなかったと聞く。

「一ついいか。俺には兄しかいないから分からないんだが、下の者、というのはどういう感じなんだ?」

歩きながら、ついでに尋ねてみた。

突然振られた話題であるのに、ロバートは嫌がる素振り一つみせず考える。

「そうですねぇ。守りたくなる存在です」

「守る、か」

「僕の場合は、ですが。よそのことなんて知りませんし」

鼻歌でも交えるような口調で彼が言う。

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