悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
上目遣いで見つめた途端、兄の笑顔がへにゃりとする。

(ああ、妹バカだったわ)

真面目な話をしていいものか迷う。

けれど彼の笑顔が、不意に一層優しくなった。「あ」と声を上げた時、アメリアは頭を撫でられていた。

「会っていなかったのは、例の活動とやらが忙しくて?」

「うっ。その、勉強もだけど……実をいうと、活動の方が理由かも」

口に出してみると、いよいよ自分が現ん員だと思える。アメリアは心配になって、兄に前のめりになった。

「ねぇ、エリオット様は元気がとてもなかった? 大丈夫? それってもしかしなくても、全部私のせいよね?」

「大丈夫だよ、落ち着いて。仕事疲れが大半だと思うな」

ロバートはにこにこ笑って、アメリアの頭をぐりぐりと大雑把に撫でる。

何歳になってもこれだ。

しかも上品さとは程遠くて、弟にでもやるみたいに力が強いから髪がぐしゃぐしゃになる。後ろでまたメイドが「ぼっちゃん!」と言っていた。

(でも……どうしてかしら。こうされている時、とても懐かしく感じるの)

大きくなっても、幼い頃と変わらない。

それを考えるといつも、前世の兄もそうだったように思えてしまう。

よく覚えていない癖に変だ。胸を締め付ける哀愁は、気のせいだろう。この兄を前にすると『前世の兄』へ思いを馳せそうになるのも、アメリアが記憶を思い出してそんなに経っていないせいかも――。

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