悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
「認めていなかったら、全力で破棄させてるね」

貴族らしくない台詞だった。

相手は王族である。なんて畏れ多い発想だろうか。

(でも――)

彼らしくて、アメリアは笑った。

「僕から見ても、エリオット殿下は仕事熱心なお人だと感じる。アメリアと過ごす時には休憩を入れてくれるから、元々の事務官たちは助かるんだとか」

「あ。もしかして、エリオット様に頼まれでもした?」

「先に頼まれたのは部下たちの方に、だけどね。腰を据えて休んでくれる気配がないので、できれば殿下をどうにか休ませてくれとは言われた。で、そのあとに殿下から話を持ち掛けて、待ち合わせの伝言をもらった」

なんだ、それでエリオットの話を出してきたらしい。

(考えてみたら、先週末のパーティーでは会ったものね)

日数にすると、たった数日だ。

けれど、その少し前みたいにすねられていても困る。

「元気がない理由がそれだとすると……この前みたいに、私の方からキスをしたら元気になってくれるかしら?」

会えなかったと言っても、パーティーでは一緒だったから、その方法でまた機嫌を戻してくれそうな気もする。

すると兄が「ぐはっ」と呻きを上げて、ソファの肘向けに倒れた。

「えっ、お兄様!?」

認めていたはずなのに、どうしてそう過剰反応しているのか。

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