悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
やはり前世の「兄」というより、妹溺愛の兄だ。アメリアは呆れつつも、大慌てでメイドたちを呼んだ。



◆§◆§◆



その翌日。

とにかくエリオットに会おうと思って、アメリアは早めに来た迎えの馬車で、速やかに王宮へと向かった。

クラークに迎えられてすぐ、兄から聞いた待ち合わせ場所へと案内される。

そこは、執務室からほど近くにある休憩部屋だった。

広い空間には、品よく調度品が配置されていた。鮮やかな赤い生地に、金糸の入ったアンティークソファもある。

「お前、もう動くな」

「なんで!?」

入室して顔を合わせるなり、エリオットに溜息と共にそんな言葉をもらされてしまった。

クラークが警備のため外に立ち、扉を閉める。

二人きりにされると、途端に廊下側の人々の音も鈍く聞こえる程度になった。開かれた窓の外は、のどかだ。

「ああ、すまない。驚かせたな。先にそんなことを言うつもりじゃなかった。こっちへおいで」

自責の念に駆られたのか、エリオットが詫びてアメリアをソファへと導いた。

「全然会えなかったものだから」

隣り合って座ると同時に、彼が吐息交じりに囁きを落とした。

「会いに来てくれていたの? ごめんなさい、その……気付かなくて」

忘れていた、なんて言えなかった。

(お兄様が言っていた通り、疲れてもいるみたい)

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