近くて遠い幼なじみの恋
4匹目、柊と鰯と私
「じいちゃん、もうすぐ退院だって」
「鰯(いわし)良かったなぁ。」
「柊(しゅう)ちゃん見舞いありがとな」
最近疲れからか血圧が上がって一旦入院してた祖父のお見舞いに来たのは良いけど今絶対会いたくなかった柊じいちゃんに鉢合わせ中だ。
この人こそ響旅館大旦那でありあーちゃんの祖父の冷泉柊蔵(れいぜいしゅうぞう)でうちのじいちゃんの幼なじみ。
ちなみに鰯とはじいちゃんの小さい頃からのあだ名
「幸。久しぶりだな」
「柊じいちゃん、お久しぶりです」
お見合いをさせた張本人であるけどうちの1番のお得意さんだからとにかく明るく笑顔で挨拶。
「いつ見ても幸は可愛い。明るくて笑顔も良い」
可愛がってくれてるはずなのに婚約させやがって!チッと舌打ちしたいけど我慢。
「柊じいちゃんもお元気でなによりです。じいちゃん、じゃあ帰るねー」
祖父の着替えを入れたバッグを持ち席を立つ。
「何か聞きたい事があったんじゃないのか?例えば、絢の事とか」
柊じいちゃんのこの人を見透かしたような顔、大嫌い。
「別に無いよ。」
絶対聞きたくない。
高級旅館の息子と魚屋の娘がどうなるわけでも無かったわけだし。
「まだまだ子供だったか2人共」
「もう私25だよ。子供じゃない」
祖父と柊じいちゃんは2人顔を見合わせてケラケラ笑い出す
バカにしてる!
じいちゃん達からすれば子供だけど意味無く笑われて良い気はしない
「まあ良い。今度婚約披露パーティするから幸もおいで」
まだケラケラ笑う2人にイラッとしながら「じゃあね」と病室を飛び出した。