近くて遠い幼なじみの恋
「ありがとうございました!」

厨房の皆さんにお礼を言って車に乗り込み
裏門から坂を降りルームミラーで見る響。

いつか自分の稼いだお金で泊まりに行ける日まで正面から入りたくない
店で働いても給料を多く貰ってるわけじゃないからいつ叶うかも分からない

「正々堂々と行くからあーちゃん待っててね!!」

ギアシフトを握る手に力を込めた。




今朝も安定の寝坊にガバッと掛け布団を剥がされて目を擦る私と冷ややかな目のあーちゃん。

「本当、幸って」

「私って?」

可愛い?とか綺麗?とか?

「いつもヨダレ垂らしてんのな」

えー!!!!!!!!!

ガバッと飛び起きて鏡を見ると見事なヨダレの後が残ってる

「もう!思ってたなら早く教えてくれても良かったのに」

こんな女子力無しの私をあーちゃんが見てくれるわけない

「幸らしいと言うか、まあ幸だな」

冷ややかな目から一転してフッと笑う顔は昔から可愛い。

そもそも小さい頃は女の子みたいな綺麗な顔と絢と言う名前でイジメられていたあーちゃん。それを私が庇ってたんだけど。

今では180超える身長に女の子みたいな顔は男らしさを備えてしまって少し遠くなった感じがする。

「絢くん、おかわりは?」

今日はうちで食べる朝ごはんのおかわりの催促を私には見せない笑顔で母にお茶碗を手渡す。

お互い一人っ子で男の子が居ない母はあーちゃんが可愛くて仕方ないらしい。

「何か、あーちゃんばっかりずるい」

母とあーちゃんは“ん?”て顔をして私を見る

「おかわりなら自分でよそいなさい」

いやいやそうでは無い
あーちゃんも「これやる」と言って玉子焼きを私のお皿に。
いやいやそれも違う。

「あーちゃん男みたい」

私の発言にまたも2人は“ん?”て顔をする

「何言ってんの?あんたは本当におバカな子ね〜絢くんは昔から男の子じゃない」

母からはおバカ呼ばわり。
あーちゃんは気にせず黙々と朝ごはんに手をつけてる。

その顔はいつも見る呆れた表情。
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