近くて遠い幼なじみの恋
2匹目、鯛と私とあーちゃん
まじですか。
連れて来られて私の不安な顔が鏡に写ってる
「幸がちょうど良いんだって」
既に首にはケープを被せられて人間の顔をしたてるてる坊主姿
「カットモデルなら佳奈でも良いじゃん」
綺麗な黒髪の佳奈は背中まであるロングヘアで私は肩下2cmくらいしかないセミロング
「佳奈の髪は勿体ないし。俺でもさすがに緊張するって」
自分の彼女だろ!!とか私は良いのか!!と突っ込み所満載を鏡越しに軽く睨んで自分の毛先に目をやった
最近美容室とか全く行ってないから伸びっぱなしの髪に少し癖毛のせいで後ろや横は跳ねてるのが分かる
「つーか、ここ床屋じゃん!!」
外には青白赤のサインポールがくるくる回ってる
「さっちゃんごめんね。うちのバカ息子が無理を頼んで」
おじさんは2軒隣の肉屋の山さんの髭を剃ってる
「バカ息子が隣の倉庫とここをくっ付けて床屋と美容室するって聞かなくてさ」
そう言うおじさんの顔はまんざらでもなく嬉しそうで私は断る事が出来なくなった
1年前に都会から地元に帰ってきた大輝は中学を卒業して専門学校に行き美容室でバイトをしながら勉強してそれなりの技術を取得して戻ってきた。
入退院を繰り返すおばさんの為に帰ってきたのは何も言わなくても分かる。