近くて遠い幼なじみの恋
3匹目、しじみ汁と私
『絢くんがねー』

「私も驚いちゃったよ。ハハ」

『付き合う通り越して結婚とか早すぎ。ハハ』

もう笑うしかない。
佳奈も電話越しに笑ってくれる。
お金持ちの政略結婚なんてこんな物なんだろう。

『朝は起こしに来なかったの?』

その言葉に頷くしか出来ない。
結納の次の日に他の女を起こしに来るわけがない。
配達から帰って両親には明日からあーちゃんは来ない事だけ言って父と2人で市場に出掛けた。

『幸、夜は暇だよねー?飲み行こう!私と大輝と颯太と花梨と華呼ぶから』

本当はそこにあーちゃんがいて仲良しのグループだけどさすがに名前を佳奈は出さない

『後で時間連絡するから、、夜楽しも?』

「うん。じゃあ、夜に向けて少し仮眠する」

配達も終わって店番は母に頼み仮眠をする
とにかく眠りたい。
ベッドに横たわりギュッと瞼を閉じた



「大将、とりあえず生6つー!」

店中に聞こえる大輝の声とテーブルではメニュー表を花梨(かりん)が仕切って紙に書いて行く

「あれ、何だっけ、あー、だし巻き玉子」

「颯太いつも同じ物ばっか」

「はぁ?虎のだし巻き玉子最高じゃん」

颯太と華もいつも通りの口喧嘩

居酒屋虎成(いざかやとらなり)はうちらの仲良しグループ行きつけの店でお酒を飲めない年齢の時でもファミレス代わりに皆んなで溜まり場にしてた大切な場所

「幸はいつものたこわさで良いのよねー」

前に座る佳奈が私の大好物を花梨に書かせた

「ほら、生6つ」

大将と女将さんが私達のテーブルに置いて虎成特製の唐揚げを「サービス」と言って置いて行く

「じゃあ、久しぶりの再会にー」

「2週間前も会ったじゃん」

「華うるさい!まあかんぱーい」

それぞれにジョッキを合わせて一気にグッと飲み干す

「やっぱり仕事終わりはこれだよな!」

「大輝早い!もう2杯目?」

「ほら、幸も飲んで!」

まだ1杯目が半分残ってるのに次を頼もうとするから慌てて飲み干した

「しかし、絢が婚約とかびっくりなんだけど」
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