スクールアイドル防衛隊─通行人A子と弱虫王子―
「これは、(まわ)りからの相談(そうだん)だ。」

 ファイルの中身(なかみ)をこちらに()けられ、とりあえず()んでみる。

 (すご)いページ(すう)だけど、さすが国語教師(こくごきようし)()すファイルというか、綺麗(きれい)(まと)まっていてとても()みやすい。

 だけど、だからこそ内容(ないよう)がスルッと(あたま)(はい)ってきて、その内容(ないよう)(ひど)さに「うわぁ」と(こえ)()た。

「・食堂(しよくどう)(ひと)だかりが出来(でき)てパン(ひと)()えない」

「・邪魔(じやま)

「・キャーキャーうるさい」

「・ファンクラブに(から)まれた」

「・(はな)しかけただけで尋問(じんもん)にあった」

「・ヤバイ」

 (なか)には語彙力(ごいりよく)()一言(ひとこと)のものも()じっているけど、(すご)(りよう)

 (なん)ページにもわたって()かれていて、全部(ぜんぶ)()むと(おも)うと目眩(めまい)がしそうだ。

 ・・・色色(いろいろ)意味(いみ)で。

 先生(せんせい)(つぎ)、とページをごっそりめくる。

「これが被害者(ひがいしや)、スクールアイドルからの相談(そうだん)だ。」

 そのページのタイトルの部分(ぶぶん)には「花菱(はなびし)光紀(こうき)相談(そうだん)」と()かれていた。

「・()んでいたペットボトルが()くなった」

「・(つね)(だれ)かの視線(しせん)(かん)じる」

「・トイレの出待(でま)ちをされた」

「・リコーダーを()められている(ところ)()た」

「・着替(きが)えをジロジロ()られる」

「・先生(せんせい)(おそ)われかけた」

 こちらも、どれもこれもひどい内容(ないよう)etc(エトセトラ)

 ()んでいて、()くと同時(どうじ)(かな)しくなってくる。

 しかもこれ、タイトルからして、全部(ぜんぶ)花菱(はなびし)さんって子の相談(そうだん)なんでしょう?

 可哀想(かわいそう)すぎる。

「・・・まぁ、こんな(かん)じだ。
ちなみに、このファイルの相談(そうだん)大半(たいはん)(かか)わってくるのが花菱(はなびし)だ。」

「え、(うそ)でしょ・・・!?」

 このファイルの!?

 ファイルはかなりの分厚(ぶあつ)さで、教科書(きようかしよ)1冊分(さつぶん)はある。

 これ全部(ぜんぶ)!?

 ますます、その花菱(はなびし)って()不憫(ふびん)になってくる。

「まぁ、相談(そうだん)しにくるのがほとんど“みっくん”なのも理由(りゆう)の1つだけどねー。それにあの()()だし?」

花菱(はなびし)はもう可哀想(かわいそう)になってくるレベルだぜ。まぁ、あの()()だと仕方(しかた)ない()もするけどな。」

 ミヤさんも先輩(せんぱい)(かお)()わせて、(うなず)きあう。

「あれはもう傾国(けいこく)芸術(げいじゅつ)作品(さくひん)(いき)だからな。あの顔面(がんめん)だけで、もう人間国宝(にんげんこくほう)になれるだろ。」

「なれそう!!」

 先輩(せんぱい)(たち)(こえ)見事(みごと)(かさな)なって、きょとん、と一瞬(いつしゆん)(しず)かになる。

 そして(わたし)()いた3(にん)が、お(なか)(かか)えて(わら)(はじ)めた。

 は、(はなし)についていけない・・・。

 というか、この先生(せんせい)にそこまで()われるって、一体(いったい)どれだけ・・・。

 先生(せんせい)も、俳優(はいゆう)()そうなくらい、綺麗(きれい)顔立(かおだ)ちをしている。

 そんな先生(せんせい)人間(にんげん)国宝(こくほう)になれる、だなんて()うんだ。

 ・・・信用(しんよう)は、できないけど。

 いつもの態度(たいど)(おも)()して、(にが)(かお)になる。

「まぁ、この花菱(はなびし) 光紀(みつき)(おも)相談者(そうだんしや)だ。」

 やっと(わら)いやみ、目尻(めじり)(なみだ)をぬぐった先生(せんせい)()う。

 あ、光紀(こうき)じゃなかったんだ。

「こんな(かん)じで、学校(がつこう)()きん()美形(びけい)(たち)(まわ)りにはトラブルが()(まと)う。そうして風紀(ふうき)(みだ)れる。だから風紀委員(ふうきいいん)(かれ)らの(まわ)りを(まも)るんだ。それが、(かれ)らスクールアイドルと、(まわ)りの生徒(せいと)()ごしやすい学園生活(がくえんせいかつ)(まも)ることになる。」

 はぁ・・・。

 理解(りかい)できなくはないけど、やっぱり馬鹿(ばか)げている()もする。

 というか、スクールアイドルってその()(かた)(あき)らかに差別(さべつ)じゃない・・・?

 面倒(めんどう)くさいことになりそうだし、()わないけどさ。

 それに、(わたし)がどうしてそんな風紀委員(ふうきいいん)(えら)ばれたのかも()からない。

「・・・どうして(わたし)なんですか?」

 ()いてみれば、先生(せんせい)()たり(まえ)のように(かえ)した。

「お(まえ)美形(びけい)とか恋愛(れんあい)とかに興味(きようみ)なさそうだったからだ。(めずら)しいんだぞ? そういう(やつ)。アイツらは本当(ほんとう)にアイドル(てき)(あつか)いだからな。」
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