スクールアイドル防衛隊─通行人A子と弱虫王子―
「なんでだ!?」

「えーなんでー!?」

 先生(せんせい)とミヤさんが同時(どうじ)(こえ)をあげる。

 なんでって()われても・・・、そんな仕事(しごと)(あき)らかに面倒(めんどう)くさそうじゃない。

 そんなに人気(にんき)のある生徒(せいと)(ちか)くに()るなんて、嫉妬(しつと)とかが(すご)そうだし、修羅場(しゆらば)仲介(ちゅうかい)とかもしないといけないんでしょう?

 物凄(ものすご)大変(たいへん)そうだし、それこそクラスで()いてしまう。

 それよりかは生徒会(せいとかい)書記(しよき)とかになる(ほう)がよっぽどマシそうだ。
 
内申(ないしん)は上がるぞ? お(まえ)()にしてたろ?」
 
 その言葉(ことば)にちょっぴり()らぐけど、それでも(いや)だった。

 (だま)っていると、うーん、と(まゆ)()げた先生(せんせい)が「強情(ごうじよう)だなぁ」と(つぶや)く。

「・・・嫉妬(しつと)とか、(すご)そうですし、(わたし)そんなに(ひと)(はな)すこと得意(とくい)じゃないから。」

「そんなのオレらがカバーするって! ね、ヒーローセンパイ、ハルハルセンパイ!」
 
「おう!」

()たり(まえ)やろ。・・・けど、ムリに(さそ)うのはよくないで?」

 どうやらこの、天城(あまぎ)先輩(せんぱい)(わたし)味方(みかた)みたいで、(わたし)気遣(きづか)うような目線(めせん)()けている。

 緋色(ひいろ)先輩(せんぱい)も、天城(あまぎ)先輩(せんぱい)言葉(ことば)()いて(なや)んでる。

 だけどミヤさんだけは()()がりたくないみたいで、ぐぬぬって(かお)をしかめていた。

「それは、そうだけど。でも、オレ、(おんな)()(はい)ってきて()しいもん!
ただでさえ人手不足(ひとでぶそく)なんだし、オレらが()づけないことにも()づけるかもしれないし・・・ね、お(ねが)い、(はい)ってくんない?」

 ミヤさんが()()わせて、そのキラキラした可愛(かわい)(かお)懇願(こんがん)してきた。

 そっか、もしかすると風紀委員(ふうきいいん)(おんな)()がミヤさんだけだったから、一人(ひとり)(さび)しかったのかもしれない。
  
 しかも多分(たぶん)一人(ひとり)だけ1年生(ねんせい)なんだ。

 頭の(あたま)片隅(かたすみ)に、この()なら友達(ともだち)になれるかもしれない、なんて()かんできて、すぐにその(かんが)えを()(はら)った。

重大(じゆうだい)人手不足(ひとでぶそく)なんだ。(たの)む、(はい)ってくれ・・・!」

 先生(せんせい)も、()()わせて(たの)んでくる。

「・・・(わたし)っ、生徒会(せいとかい)書記(しよき)やろうと(おも)ってるんです。だから(はい)れません。ごめんなさい。」

 これで(なに)()えないだろう、そう(おも)って(かれ)らを()れば、(みんな)(かた)()としていた。

 その(なか)にはミヤさんもいて、残念(ざんねん)そうな、(かな)しそうな(かお)をしていて、チクリと(むね)(いた)んだ。

生徒会(せいとかい)書記(しよき)か・・・それなら(オレ)には()められないな。」

「ごめんなさい。」

 そう()って、()げるように(せき)()って背中(せなか)()けた。

 もうここに()ても仕方(しかた)がない。

 ガラリとドアを()けて(そと)()る。

失礼(しつれい)しました。」

 そうしてドアを()じた瞬間(しゆんかん)、ドッと(つか)れみたいなものが(おそ)ってきて、じっと()(つむ)って、ため(いき)をついた

 これで、()かったんだよね。

 だって、こうしないと、もっとクラスで()いちゃいそうだもの。

 そもそも、そういうの(わたし)()いてなさそうだし・・・。

 (あたま)(かれ)らの(かな)しそうな姿(すがた)がよぎる。

 (かれ)らと、ミヤさんと、友達(ともだち)になれる可能性(かのうせい)自分(じぶん)から手放(てばな)してしまった()がして、(わす)れようと(あし)(うご)かした。

 (はや)(かえ)ろう。

 そして勉強(べんきよう)しよう。

 勉強(べんきよう)している時間(じかん)は、(いや)なこと(かんが)えなくて()むもの。
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