スクールアイドル防衛隊─通行人A子と弱虫王子―
「え、なに、どうしたの? オレもしかして(なに)かしちゃった?」

 ミヤさんは(わたし)のがっかりした様子(ようす)()不安(ふあん)そうにしている。

「いや、大丈夫(だいじようぶ)です。ただ(ある)いていただけなので。」

「そう・・・? てゆーか、タメで()いって! ちょっと堅苦(かたくる)しいぞー? えいこりん。」

 タメの意味(いみ)()からないんです・・・。

「あの・・・タメって、(なに)ですか?」

 そう()けば、ミヤさんは一瞬(いつしゆん)(おどろ)いたような(かお)をした。

「あー、えっとね、敬語(けいご)やめて、普通(ふつう)(しやべ)ってってこと!」

 けれど、すぐに(あか)るい(かお)(もど)って、(おし)えてくれる。

 普通(ふつう)(しやべ)ること・・・。

「それでさ、えいこりんってこの学校(がつこう)から(いえ)(ちか)い?」

「うん、まぁ、(ある)いて()れま・・・(ある)いて()れるよ。」

 敬語(けいご)をやめたものに()()えると、ミヤさんは(うれ)しそうにした。

 やっぱり、ミヤさんって可愛(かわい)い。

 (はじ)めて()たときはメイクとかバッチリって(かん)じで(こわ)かったんだけど、(はな)してみると、(すご)いフレンドリーで(はな)しやすいんだ。

 それに表情(ひようじよう)がコロコロ()わるから()ていて(たの)しい。

 (うそ)をつけないタイプの(ひと)なのかも。

 (わたし)はそういう、可愛(かわい)い、純粋(じゆんすい)って(かん)じの(ひと)じゃないから、(すこ)(うらや)ましいな。

「じゃあさ、一緒(いつしよ)(かえ)らない? えいこりんともっと(はな)したかったんだ。」

 その言葉(ことば)(おどろ)いた。

 (わたし)と、一緒(いつしよ)に?

 そんなこと()われたの(はじ)めてで、戸惑(とまど)ってしまう。

「なんで?」

 (おも)わず(かえ)してしまうと、ミヤさんはその茶色(ちやいろ)()一瞬(いつしゆん)(まる)くした。

「なんでって・・・えいこりんがいい()そうだったから。(いや)だった?」

 その言葉(ことば)にふるふる(くび)()ると、(うれ)しそうにその()三日月型(みかづきがた)(ほそ)める。

「じゃあ、一緒(いつしよ)(かえ)ろ! オレ、いつも(かえ)るのこの時間帯(じかんたい)だから、一緒(いつしよ)(かえ)友達(ともだち)()ないんだよねー。センパイたちは(とお)いからすぐ(えき)でお(わか)れだしさ。」

「あっちょっと()って!」

 (あわ)てて()()める。

 だって(わたし)花菱(はなびし)先輩(せんぱい)(かえ)らなきゃいけないもの。

 (うれ)しい(さそ)いだけど、(ことわ)らなきゃ。

「ごめん、(わたし)()()わせしてる(ひと)()て……」

 その言葉(ことば)に、ミヤさんは(あき)らかにがっかりした様子(ようす)だった。

「そっかぁ、それはザンネン。それならさ、せめてその()()()わせの場所(ばしよ)まで一緒(いつしよ)()かせてよ。ダメ?」

 そうお(ねが)いされてしまったから、(おも)わず「いいよ。」って()ってしまっていた。

「ほんと!? ありがと!! じゃあ()こ!」

 その(うれ)しそうな(かお)()ると、オッケーして()かったって()になってくるから、この()(すご)い。

 やっぱりちょっと(うらや)ましい、なんて(おも)ってしまった。
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