スクールアイドル防衛隊─通行人A子と弱虫王子―
「・・・とりあえず、お(ちや)とケーキ()ってきたから(すわ)って。」

 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)(あき)らかにショックを()けている様子(ようす)で、トレーをテーブルに()いた。

 や、やっちゃったー!!

 (あき)らかに花菱(はなびし)先輩(せんぱい)(きず)ついてるよ、どうしよう!

「えいこりん、それ一番(いちばん)みっくんに()っちゃダメなやつ!! (はや)(あやま)った(ほう)がいいよ!」

 ミヤさんは小声(こごえ)()ってくる。

「ごめんなさい!」

 (あやま)ると、花菱(はなびし)先輩(せんぱい)(なが)睫毛(まつげ)()せて()った。
 
「いいよ、オレもそういう容姿(ようし)してる自覚(じかく)はあるし。こんな髪型(かみがた)してるのが(わる)いのも()かってる。」

 いや・・・髪型(かみがた)のせいもあるんだろうけど、顔立(かおだ)ちもかなり可愛(かわい)いから、髪型(かみがた)()えても可愛(かわい)いと(おも)う。

 それは(くち)()さずに、(べつ)疑問(ぎもん)(くち)()す。

「それなら、どうしてそんな髪型(かみがた)をしてるんですか?」

敬語(けいご)()しでいいよ。なんなら先輩(せんぱい)もつけなくていい。(かた)口調(くちよう)、そんなに()きじゃないんだ。・・・この(かみ)は、(にい)さんがこれ以上(いじょう)()ると(かな)しむからやってるだけ。オレの趣味(しゅみ)じゃないよ。」

 お(にい)さんの趣味(しゅみ)だったんだ。

 じゃあもしかして、こんなに綺麗(きれい)にセットされているのも、お(にい)さんがやってるのかな。

「それで、どうしてここにオレたちしか()んでないのか、だっけ。」

 椅子(いす)(すわ)った私達(わたしたち)にカップと美味(おい)しそうなガトーショコラを(くば)りながら、花菱(はなびし)先輩(せんぱい)・・・花菱(はなびし)くんは言った。

 うーん、先輩(せんぱい)に、先輩(せんぱい)つけずに()ぶってやっぱりハードル(たか)いし違和感(いわかん)

「・・・オレのせいなんだ。(まえ)のマンションで、隣人(りんじん)監禁(かんきん)されかけたことがある。」

 監禁(かんきん)!?

「ごめん! ヤなこと(おも)()させて! もうそれ以上(いじょう)()わなくていいから。」

 ミヤさんの言葉(ことば)花菱(はなびし)先輩(せんぱい)はゆるく(くび)()る。

「いいよ。()うって()ったろ。()ったら(かる)くなるものもあるかもしれないし、()わせてよ。」

 ミヤさんは心配(しんぱい)そうだ。

 やっぱり()きだから、心配(しんぱい)なんだね。

監禁(かんきん)されそうになって、だったらって、(おや)()われてここに()してきたんだ。各階層(かくかいそう)ごとにロックが(ちが)うから、この(かい)にはオレたちしか(はい)れない。」

 それって、まるで(とらわ)われているみたい。

 そう(くち)()しそうになって(とど)める。

 この(ひろ)部屋(へや)が、途端(とたん)(せま)いものに(おも)えた。

(むかし)から誘拐(ゆうかい)されかけたり、(おそ)われかけたりしたことはよくあって、そのたびに(かあ)さんと(とお)さんには(あき)れられてるんだ。花園学園(はなぞのがくえん)(かよ)うには(いえ)(とお)いから(ちか)くに()してきたんだけど、それならって、(にい)さんが一緒(いつしよ)()んでくれてる。・・・でも、(いえ)居心地(いごこち)(わる)かったから、(いま)生活(せいかつ)()にいってるよ。」
< 26 / 60 >

この作品をシェア

pagetop