スクールアイドル防衛隊─通行人A子と弱虫王子―

社交上手のなりかた

 あの(あと)美味(おい)しくガトーショコラを(いただ)いた私達(わたしたち)は、花菱(はなびし)先輩(せんぱい)見送(みおく)られながら(いえ)へと(かえ)った。

 結果(けつか)として、(わたし)(いえ)花菱(はなびし)先輩(せんぱい)(いえ)のすぐ(そば)ってのはバレてしまって、花菱(はなびし)先輩(せんぱい)(よろこ)んでいた。

 だけど(わたし)としては、嫉妬(しつと)(こわ)くて出来(でき)(かぎ)花菱(はなびし)先輩(せんぱい)には近寄(ちかよ)りたくないな・・・。

 先輩(せんぱい)がいい(ひと)ってことは()かってるんだけど、やっぱり女子(じよし)(こわ)い。

 ミヤさんは(じつ)(いえ)反対方向(はんたいほうこう)みたいで、もと()(みち)(もど)っていった。

 わざわざ私達(わたしたち)()いてきてくれたみたい。

 やっぱり花菱(はなびし)先輩(せんぱい)のことが()きだからなのかな。

 (わたし)(はな)したいってのは、先輩(せんぱい)()(まえ)(はなし)だったし本当(ほんとう)なんだろうけど、なんだかちょっぴり(さび)しい。

 (わたし)、こんなに(さび)しがりやだったっけ。

「あ、英子(えいこ)おかえり。今日(きよう)(おそ)かったじゃない。どうしたの?」

 お(かあ)さんが(こえ)をかけてくる。

 なんて()えばいいんだろう。

 ミヤさんと花菱(はなびし)先輩(せんぱい)友達(ともだち)、ではないし、クラスメイトでもない。

「えっと・・・、先輩(せんぱい)(いえ)にお邪魔(じやま)してたの。」

「へえ。」

 お(かあ)さんはせっせと夕食(ゆうしよく)準備(じゆんび)をしている。

「まぁ、英子(えいこ)学校(がつこう)馴染(なじ)めているようでよかった。心配(しんぱい)してたのよ? あんたの性格(せいかく)だと友達(ともだち)(つく)るの(むずか)しいかもって。」

 うっ・・・。

 お(かあ)さんの言葉(ことば)(すべ)(わたし)()さってきて、(かお)をしかめる。

 ()えない。

 まだ一人(ひとり)友達(ともだち)(つく)れていないなんて。

 出来(でき)(かぎ)平常(へいじよう)(よそお)いながら、コップに(みず)()れる。

 そして()げるように自分(じぶん)部屋(へや)()がった。

 そして(つくえ)()かう。

 国語(こくご)勉強(べんきよう)(はじ)めようってワークを(ひら)くけれど、今日(きょう)のことで(あたま)がいっぱいで、ついそのことについて(かんが)えてしまった。

 今日(きよう)(すご)()だったなぁ。

 先生(せんせい)について()ったら、その(さき)はまさかの風紀委員(ふうきいいん)で、その(うえ)みんな個性豊(こせいゆた)か!

 しかも、仕事内容(しごとないよう)は“スクールアイドル”の護衛(ごえい)なんておかしな(はなし)で。

 (ことわ)ったと(おも)ったら、花菱(はなびし)先輩(せんぱい)のストーカーの(けん)()()まれて、ミヤさんとも一緒(いつしよ)(かえ)ることになって、お(ちや)とガトーショコラまでご馳走(ちそう)してもらって。

 (わたし)友達(ともだち)なんていらないって(おも)ってた。

 趣味(しゆみ)()わない(ひと)友達(ともだち)になっても(つか)れちゃうだけだって。

 だけど、ミヤさんと(はな)して、あの()なら友達(ともだち)になりたいってそう(おも)った。

 だって、(はな)していて(たの)しかったもの。

 それに、(すご)くいい()だった。

 ・・・でも、なってくれるかなぁ。

 (わたし)、こんな性格(せいかく)だし、口下手(くちべた)だし、一緒(いっしょ)()てつまらないかもしれない。
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