スクールアイドル防衛隊─通行人A子と弱虫王子―
 一緒(いつしよ)学校(がつこう)()て、三人(さんにん)(ある)く。

 今日(きよう)花菱(はなびし)先輩(せんぱい)靴箱(くつばこ)封筒(ふうとう)(はい)ってないみたいで、ホッとした様子(ようす)だ。
 
 その途中(とちゆう)十字路(じゆうじろ)で、ミヤさんが()まった。

「オレ、こっちだから! じゃあね!」

 ひらっと()()って、ミヤさんは信号(しんごう)(わた)っていく。

 だから、(わたし)花菱(はなびし)先輩(せんぱい)だけが(のこ)された。

 二人(ふたり)きりになっちゃった・・・。

 (まわ)りから()られないかな、とかそういう(こわ)気持(きも)ちもあるんだけど、まずは、(なに)(はな)せばいいんだろう。

 さっきまではミヤさんが色色(いろいろ)(はなし)()ってくれてたから(はな)せたけど、いざ二人(ふたり)になると(なに)(はな)せばいいかわからないんだ。

 共通(きょうつう)話題(わだい)()らないし・・・。

 (しず)かな時間(じかん)(つづ)く。

 うっ、()まずい・・・!

 そんな静寂(せいじやく)を切るように、花菱(はなびし)先輩(せんぱい)から(くち)(ひら)いた。

「じゃあ、()こっか。」

 また、(あし)(うご)かしはじめる。

相模(さがみ)。」

「はい?」

 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)(わたし)名前(なまえ)()んだから、返事(へんじ)(かえ)す。

 なんだろう。

「さっきはありがとう。」

 さっき・・・?

 あぁ、もしかして、(わたし)花菱(はなびし)先輩(せんぱい)弁護(べんご)したときのことかな?

(わたし)事実(じじつ)()っただけですけど・・・どういたしまして。」

 (すこ)しだけ、口角(こうかく)()がるのが()かる。

 やっぱり、お(れい)()われるのって(うれ)しいな。

「あと、オレに(たい)して敬語(けいご)なしでいいって()ったじゃん。」

「それは()れないっていうか、先輩(せんぱい)(たい)して敬語(けいご)なしって違和感(いわかん)あって。」

「それは()れてよ。」

「ええ……?」

 あの「ありがとう。」からどんどんと(はなし)(ひろ)がる。

 あれ、なんだか・・・(たの)しい?

 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)との会話(かいわ)は、特別(とくべつ)面白(おもしろ)(はなし)って(かん)じじゃなかったんだけど、なぜか(たの)しかった。

(むかし)(おんな)()(ふく)()せられたこともあったんだ。(いま)はさすがにないけど」

「でも、似合(にあ)いそう。」

「それ、あんまり(うれ)しくないんだよなぁ。」

 あ、そっか、ペースが()てるからだ。

 会話(かいわ)途中(とちゆう)で、()づく。

 ミヤさんとの会話(かいわ)は、面白(おもしろ)(はなし)をミヤさんが()って、そっから(はなし)(ひろ)げていくから(はや)めのペースなんだけど、花菱(はなびし)先輩(せんぱい)との会話(かいわ)は、お(たが)いゆっくりのペースで()きなように(はな)(かん)じなんだ。
 
 それに、(わたし)()ってる話題(わだい)(はな)してくれるから、(はなし)(つづ)くの。

 学校(がつこう)(はなし)だとか、ニュースの(はなし)だとか、自分(じぶん)(はなし)をしてくれたりとか。

 やっぱり、()てるって(おも)ったの、そういう(ところ)からなのかな?

 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)も、()いてる(かん)じ、流行(はや)りとかアニメとかに(うと)いのかも。

「そうだ、(にい)さんがまたケーキ()ってきたんだけど、()べにくる?」

「え、いいんですか?」

 あ、まずい、つい(なが)れで(うなず)いちゃった!

 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)(うれ)しいって(かお)で、「じゃあおいでよ。」って()ってくる。

 あっちゃー・・・。

 これは(ことわ)れないなって、(わたし)(すこ)(にが)(かお)になった。

 (さそ)ってもらえるのは(うれ)しいんだけど、これ(だれ)かに()られたら確実(かくじつ)勘違(かんちが)いされちゃうよ・・・。
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