スクールアイドル防衛隊─通行人A子と弱虫王子―

花菱先輩のお兄さん

 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)についていって、(かれ)(いえ)(まえ)()つ。

 また()ちゃった・・・。

 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)はドアノブを(にぎ)って、あれ?って(かお)をする。

()いてる。(にい)さん(かえ)ってるのかな。」

 え、花菱(はなびし)先輩(せんぱい)のお(にい)さんってことは・・・あの有名(ゆうめい)花菱(はなびし) 圭祐(けいすけ)さんがこの(なか)()るの?

 ええ、それは・・・(はい)りたくないなぁ。

 ファンの()だったら(うれ)しいんだろうけど、あまり()らない(わたし)からしたら、すごい()まずい。

 (おとうと)(おんな)()()れてくるんだよ?
 
 ()こうも絶対(ぜつたい)()まずいって!

 だけど、花菱(はなびし)先輩(せんぱい)()にもしていないようで、(とびら)()けて()っている。

「どうぞ。」

「おー! ミツキおかえりー!!」

 (はい)ろうとした瞬間(しゆんかん)(おく)から(みみ)馴染(なじ)(こえ)()こえてきた。

「ただいまー、ちょっと今日(きよう)はお(きやく)さんが()るから(にい)さんは部屋(へや)()て!」

 そんな先輩(せんぱい)言葉(ことば)に、部屋(へや)(おく)から「お(きやく)さん!?」って(こえ)()こえてくる。

 うっ、(はい)りづらいです先輩(せんぱい)

 そうして、(わたし)(はい)ろうかとグズグズしてる(あいだ)に、玄関扉(玄関扉)(ひら)き、(なか)からテレビでよく()姿(すがた)(あらわ)れた。



 身長(しんちよう)想像(そうぞう)より(たか)くて、スラッとした四肢(しひ)に、(ほど)よく筋肉(きんにく)()いた(からだ)、さらりと流れる茶髪(ちゃぱつ)、そして(なに)より、花菱(はなびし)先輩(せんぱい)と少し似た、海外(かいがい)()(はい)った(あま)(かお)

「ミツキにお(きやく)さんって・・・(おんな)、の()・・・?」

 (こころ)なしか、(おんな)()って言葉(ことば)だけワントーン(ひく)(かん)じた。

 ひえっ。

 (わたし)はといえば、(かた)まってしまって、(うご)けない。

 て、テレビの(ひと)()(まえ)()る!

(にい)さん! 部屋(へや)(はい)っててって()っただろ・・・。」

 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)はもうっていった(かん)じで不機嫌(ふきげん)そうな(かお)をしているけれど、その青年(せいねん)(うご)かない。

 だけど、ふと(われ)(かえ)ったかのように、(かお)(あま)笑顔(えがお)()かべて、(わたし)()(なお)ってきた。

「こんにちは。(きみ)はミツキの友達(ともだち)?」

 友達(ともだち)・・・?

 (わたし)花菱(はなびし)先輩(せんぱい)って友達(ともだち)なの・・・?

 よく(かんが)えてみれば、│私達《わたしたち》は出会(であ)ったばかりだし、どんな関係(かんけい)()からない。

(にい)さん、いいから! 部屋(へや)(はい)ってて!」

「ええ、でも、(ひさ)しぶりにミツキがお(きゃく)さんを()れてきたんだ。もてなさなきゃ。(きみ)名前(なまえ)は? ミツキのクラスの()じゃないよね?」
 
 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)のお(にい)さんは、(やさ)しそうに()いてくる。

 その、さっきの「(おんな)()」って()ったときとはまるで(ちが)う、胸焼(むねや)けがしそうなほどに(あま)(かお)(こえ)に、(わたし)萎縮(いしゅく)するしかなかった。
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