スクールアイドル防衛隊─通行人A子と弱虫王子―
 あ、そうだ。

 前前(まえまえ)から(おも)ってたことを(くち)()す。

「このアクアリウム、(すご)いセンスいいですね。(いろ)がキラキラ()らばってて、でも(まと)まりもあって、(うご)宝石箱(ほうせきばこ)みたい。」

 お(にい)さんはその言葉(ことば)に、(うれ)しそうに(ほお)(ゆる)めた。

 その様子(ようす)に、(おも)わず見入(みい)ってしまう。

 これまでの(なか)で、一番(いちばん)あどけなくて、自然(しぜん)表情(ひようじよう)だった。

 こんな(かお)もするんだ・・・なんて、(すこ)意外(いがい)(おも)ってしまう。

 (いま)まで()てきた笑顔(えがお)って、なんとなく(こわ)かったんだ。

 普通(ふつう)(わら)ってるけど、雰囲気(ふんいき)(わら)ってないというか、(はら)(なに)(かか)えてそうで。

 だけど、こんな(わら)(かた)をすると、花菱(はなびし)先輩(せんぱい)っぽいというか、(ぎやく)なんだろうけど、()ているんだ。

 本当(ほんとう)に、アクアリウムが()きなんだな。

「これはベタっていうんだ。綺麗(きれい)でしょ?」

 昨日(きのう)花菱(はなびし)先輩(せんぱい)(おし)えてもらったんだよなあ、とか(おも)いながら(うなず)く。

 だけど、お(にい)さんが(たの)しそうで、(はじ)めて(すこ)親近感(しんきんかん)(かん)じた。

 こういう(ところ)は、普通(ふつう)のお(にい)さんなんだなって。

「これライトやマリンプランツの配置(はいち)とか全部(ぜんぶ)(おれ)がやったんだよ。」

(すご)い!」

 この(いろ)とりどりのライトも水草(みずくさ)全部(ぜんぶ)!?

 やっぱり、(すご)いセンスの()(ひと)なんだ。

 この(さかな)はね、ってお(にい)さんが()うから、(わたし)(かれ)(こた)える(まえ)(くち)()す。

「ネオンテトラ!」

 (あお)いネオンみたいな背中(せなか)特徴的(とくちようてき)な、ちっちゃくて綺麗(きれい)(さかな)

「お、()ってるんだ。もしかして興味(きょうみ)あったり?」

「いえ、昨日(きのう)花菱(はなびし)先輩(せんぱい)(おし)えてもらって。」

昨日(きのう)・・・? もしかして、昨日(きのう)もうちに()たの?」

 お(にい)さんの()がスッと(ほそ)められ、さっきまでの(たの)しそうだった様子(ようす)急降下(きゆうこうか)した。

 ひえっ、いらないこと()った!!

「あのっ(わたし)以外(いがい)のもう一人(ひとり)一緒(いっしょ)に、お邪魔(じやま)させていただきました。(いや)だったのならごめんなさい。」

 ()(わけ)っぽくなってしまうけど、本当(ほんとう)(こと)()わなきゃってすぐ(あやま)る。

「・・・ミツキが()れたのならいいよ。ミツキにも友達(ともだち)必要(ひつよう)だからね。ただ、(おれ)部屋(へや)には(はい)らないで()しいかな。」

(はい)ってません!」

 ブンブン(くび)()る。

「ははっ、()かってるよ。」

 お(にい)さんはまた笑顔(えがお)(もど)る。

 なんだろう・・・この(ひと)花菱(はなびし)先輩(せんぱい)(かか)わると途端(とたん)(こわ)くなる。

「ちょっと(にい)さん、(なに)してるの。」

 不機嫌(ふきげん)そうな(こえ)()()けば、そこには三人分(さんにんぶん)紅茶(こうちや)をトレーに()せた花菱(はなびし)先輩(せんぱい)()た。
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