スクールアイドル防衛隊─通行人A子と弱虫王子―
「ごめんね、ミツキ。けど、お(きやく)さんを放置(ほうち)するわけにはいかないだろ? (すこ)(はなし)してたんだ。ね?」

 お(にい)さんは(わたし)にパチリとウインクを()ばした。

 こんなことする(ひと)(はじ)めて()た・・・。

 そんなこと(おも)いながらコクコクと(うなず)く。

 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)(わたし)様子(ようす)()て、「それならいいんだけど。」って紅茶(こうちや)をテーブルに()いた。

 ふわりと甘酸(あまず)っぱい(かお)りが(はな)をくすぐる。

「お、アプリコットティーだ。(おれ)の好きなやつ。ミツキ、もしかして(おれ)のこと(おも)っていれてくれた?」

(ちが)うから。たまたま()()ったものがコレだっただけだよ。」

 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)はジトっとお(にい)さんを()る。

 なんだか・・・花菱(はなびし)先輩(せんぱい)ってお(にい)さんといるとき、雰囲気(ふんいき)全然(ぜんぜん)(ちが)うなぁ。

 いつもは(やさ)しくて(ひか)えめな(かん)じなんだけど、(いま)容赦(ようしや)なくズバズバと(はな)している。
 
 やっぱり家族(かぞく)だから?

 これが、花菱(はなびし)先輩(せんぱい)()なのかな。

 (すこ)新鮮(しんせん)だった。

 だけど、これまで()た、どこか(おび)えてたり、(かな)しそうだったりする姿(すがた)より、こっちの姿(すがた)(ほう)断然(だんぜん)()い。

 なんとなく、イキイキしてる()がするんだ。

 それに、お(にい)さんのこと邪険(じやけん)(あつか)っているようで、(すご)()にかけているのが()てわかるの。

 その様子(ようす)がちょっと微笑(ほほえ)ましくて、口角(こうかく)()がった。

「そんなこと()って、ミツキは素直(すなお)じゃないなぁ。」

「だーかーら、(ちが)うって! 相模(さがみ)もニヤニヤすんなよ!」

 そうちょっと(あか)らんだ(かお)でムッと()られて、ハッと表情筋(ひょうじょうきん)()()めた。

 なんだか、可愛(かわい)い。

 やっぱり、花菱(はなびし)先輩(せんぱい)もこうして()ると年相応(としそうおう)普通(ふつう)(おとこ)()で、(おとうと)だ。

「ケーキも()ってくるから。」

「ありがとう。」

 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)がキッチンへ()かうと、お(にい)さんは(わたし)視線(しせん)をよこした。

「ねえ、英子(えいこ)ちゃんはさ、ミツキのこと、どう(おも)ってる?」

 どう(おも)ってるか?

 ・・・そういえば、こんな質問(しつもん)最近(さいきん)()けたなぁ。

 相手(あいて)(ちが)ったけれど。

 でも、(むずか)しいんだよね。

 素直(すなお)全部(ぜんぶ)()うのはなんだか(ちが)()がするし、(かど)()ったら(いや)だし・・・。

 どう(こた)えればいいんだろう?

 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)のイメージをとりあえず(なら)べてみる。

 (すご)綺麗(きれい)

 弱気(よわき)(ひか)えめ。

 華奢(きゃしゃ)(おんな)()みたい。

 でも、(はなし)(はず)んだ。

 そういえば、先輩(せんぱい)って、弱気(よわき)だけど(ひと)(はな)しかけることはできるよね。

 (わたし)唐突(とうとつ)相談(そうだん)してきたし、(はなし)(つな)げてくれた。
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