スクールアイドル防衛隊─通行人A子と弱虫王子―
 先輩(せんぱい)っぽさとかはないけれど、相談(そうだん)とか親身(しんみ)になって()いてくれそうだよね。

 それに、弱気(よわき)(ひか)えめってイメージも、ここに()(すこ)(くず)れたような()がする。

 うーん、これを総合(そうごう)してみると・・・。

「とっても綺麗(きれい)で、(やさ)しい先輩(せんぱい)・・・です。」

 その言葉(ことば)に、お(にい)さんは「へえ。」って(こえ)()らした。

(そと)ではそんな印象(いんしよう)なんだね。」

 その言葉(ことば)には、若干(じやつかん)(うれ)しそうな(ひび)きが()じっている。

 (そと)ではってことは、やっぱり(いえ)では印象(いんしよう)(ちが)うのかな?

「タルトケーキだよ。」

 (うし)ろから(こえ)がして(おどろ)く。

 そこには花菱(はなびし)先輩(せんぱい)が、()()けられたタルトケーキの()ったトレーを()って()っていた。

 あれ、これ、()かれちゃった?

 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)はいつも(どお)りの様子(ようす)でお(さら)()いていく。
 
 ()かれて、ない?

 よかった、もし()かれていたりしたら、(すこ)()ずかしかったもの。
 
「ミツキ、ありがとう。」

 お(にい)さんが花菱(はなびし)先輩(せんぱい)にそう()うから、(わたし)(あわ)てて「ありがとうございます。」と()う。

 (わたし)(まえ)には宝石(ほうせき)のようにキラキラした果物(くだもの)のあしらわれたタルトが()いてあった。

 わぁ、これもすごい美味(おい)しそう!

 二日(ふつか)連続(れんぞく)でケーキと紅茶(こうちゃ)をご馳走(ちそう)になっちゃって、なんだか(もう)(わけ)ない。

遠慮(えんりょ)せず()べて。二人(ふたり)じゃこの(りょう)(おお)いから。」

 そんな(わたし)(こころ)()んだかのようなお(にい)さんの言葉(ことば)(うなず)いた。

 それじゃあ、遠慮(えんりよ)なく。

「いただきます。」

 そう()ってタルトケーキにフォークを()れた。

 できる(かぎ)(くず)さないように()()けて、(くち)(はこ)ぶ。

「・・・おいしい!」

 昨日(きのう)大人(おとな)っぽい(あま)さとは(ちが)う、フレッシュでかつまろやかな(あじ)(くち)いっぱいに(ひろ)がった。

「そう? それは()かった。」

 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)(わたし)()べる様子(ようす)()て、(ほお)(ゆる)めた。

 そんな花菱(はなびし)先輩(せんぱい)をお(にい)さんはなんとも()えない(かお)()ている。

 あ、(わたし)一番(いちばん)最初(さいしよ)()べちゃった・・・。

 礼儀(れいぎ)としてどうなんだろう、花菱(はなびし)先輩(せんぱい)かお(にい)さんを()った(ほう)()かったかな、って()がついて、()ずかしくなった。

 なんだか、()べるのを()てない()どもみたいだもの。

「ホントだ。美味(おい)しい。」

 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)もタルトケーキを(くち)(はこ)ぶと、(かたち)()(くちびる)三日月(みかづき)(えが)いた。

 だけど、お(にい)さんは一口(ひとくち)()べると、そのお(さら)花菱(はなびし)先輩(せんぱい)(わた)した。

 なんでだろう?

「ミツキが()べてよ。(おれ)には(すこ)(あま)すぎたみたいだ。」
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