スクールアイドル防衛隊─通行人A子と弱虫王子―
「うん、じゃあ(もら)う。」

 (あま)すぎるって、そんなこと()(ひと)(はじ)めて()た。

 (あま)いのが(きら)いな(ひと)()ることは()ってはいたけれど、本当(ほんとう)にいるんだってちょっと(おどろ)いてる。

 こんなにも美味(おい)しいのに・・・。

 もったいない、そう(おも)いながらお(にい)さんを()る。

 それに()がついたらしいお(にい)さんは、ふっと(わら)って(わたし)()た。

意外(いがい)?」

 その(かお)の、なんて()うのかな、色気(いろけ)っていうか、そういうものに()てられて、(すこ)()れてしまう。

 そんな()(こえ)吐息(といき)()じりに()わないで()しい。

 なんて(かお)すればいいか()からなくなる。

(あま)いものが(きら)いなわけじゃないんだけどね、(すこ)しで満足(まんぞく)しちゃうんだ。」

 (すこ)しって、お(にい)さん一口(ひとくち)しか()べてなかったよね?

 いくらなんでも(すこ)しすぎる()がするけど・・・。

 そんなことを(おも)いながら、自分(じぶん)のタルトケーキを(くち)(はこ)ぶ。

 ん〜! やっぱり美味(おい)しい!

 美味(おい)しくて、モグモグと()(すす)めていくと、すぐにタルトケーキは姿(すがた)()した。

 アプリコットティーの最後(さいご)一滴(いつてき)まで()()すと、カチャリとカップを()く。

 ふぅ、美味(おい)しかった!

 (すこ)名残(なごり)()しいけど、()()わせて「ごちそうさまでした」と(こえ)()す。

 すると、花菱(はなびし)先輩(せんぱい)(こえ)をかけてきた。

「ねえ相模(さがみ)(あと)でオレの部屋(へや)についてきて。()せたいものがあるから。」

 その瞬間(しゆんかん)、お(にい)さんから(いた)いほどの視線(しせん)(かん)じた。

 先輩(せんぱい)、その誤解(ごかい)されそうな()(かた)やめてください!

 (おも)わずジトーっと()てしまったのは仕方(しかた)ないと(おも)う。

 先輩(せんぱい)()()わって、(わたし)先輩(せんぱい)部屋(へや)へと案内(あんない)される。

 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)のお(にい)さんは、(なに)()いはしなかったけど、やっぱり視線(しせん)(いた)かった。

 本当(ほんとう)花菱(はなびし)先輩(せんぱい)(から)むと(こわ)くなるよね・・・。

「どうぞ。」

 先輩(せんぱい)はドアを()ける。

 おおお・・・。

 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)部屋(へや)は、(おも)っていたよりも(もの)(すく)なくて、(ひろ)い。

 だけど、趣味(しゆみ)なのか、(はな)写真(しやしん)風景(ふうけい)写真(しやしん)一角(いつかく)(かざ)られていて、(いろ)(すく)ない部屋(へや)(いろど)りを(くわ)えている。

 (ちか)くに一眼(いちがん)レフカメラと、レンズが何種類(なんしゆるい)()かれていた。

「カメラ、趣味(しゆみ)なんですか?」

 ()になって()いてみると、先輩(せんぱい)勉強机(べんきようづくえ)()()しを()きながらこちらを()た。

「ああ、うん。そうだよ。あんまり()かないけど、たまに旅行(りよこう)()ったときに、その場所(ばしよ)写真(しやしん)()るのが()きなんだ。」

 へええ、意外(いがい)趣味(しゆみ)だ。

 先輩(せんぱい)、どちらかといえば()られる(がわ)っぽいのに。
 
「それで、これ。」

 先輩(せんぱい)(はこ)()()して、勉強机(べんきようづくえ)()いた。

 そして、(はこ)(ふた)をゆっくり()ける。

 (なか)には、沢山(たくさん)写真(しやしん)(はい)っていた。

 その写真(しやしん)には(すべ)花菱(はなびし)先輩(せんぱい)(うつ)っていて、既視感(デジャヴ)(かん)じる。

 これ……。

(おく)られてきた、盗撮(とうさつ)写真(しやしん)。」

 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)(こえ)が、(しず)かな室内(しつない)()けて()えた。
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