スクールアイドル防衛隊─通行人A子と弱虫王子―
 (わたし)(うし)ろをついていく。

 すると何気(なにげ)なく、先生(せんせい)(はな)しかけてきた。

相模(さがみ)は、もうクラスには()れたか?」

「はい。」

「じゃあ友達(ともだち)はできたりしたか?」

 うっと(のど)がつまった。

 (じつ)は、(わたし)、この学校(がつこう)()てからまだ友達(ともだち)ができていないんだ。

 自分(じぶん)から(はな)しかけるのがあまり得意(とくい)じゃなくて、アワアワしている(あいだ)友達(ともだち)グループがまとまってしまっていた。

 元元(もともと)()()がり(ぐみ)子達(こたち)はある程度(ていど)まとまっていたんだけど、(わたし)(おな)外部生(がいぶせい)()たちもすぐに仲良(なかよ)くなって友達(ともだち)(つく)っちゃった。

 つまり、(わたし)(みんな)から孤立(こりつ)してしまったんだ。

 でも、まぁ(べつ)にいいかなって(おも)ってる。

 だって、クラスの()(はなし)(まつた)()わなさそうなんだもの。

 (あたま)のいい学校(がっこう)()たから、もっと文学作品(ぶんがくさくひん)とか(あたま)()さそうな会話(かいわ)をしていると(おも)ったのに、(ふた)()けてみれば、今時(いまどき)流行(はや)りとか、アニメとか漫画(まんが)とか、()きなタレントの(はなし)だとか、(まつた)(はなし)についていけないんだ。

 (わたし)、ずっと勉強(べんきよう)ばっかりだったから。

 小学校(しようがつこう)のときは友達(ともだち)()たけど、(わたし)私立(しりつ)中学校(ちゆうがつこう)()ったから(はな)(ばな)れになっちゃった。

 ちょっとはね、(さび)しいって(おも)うことはあるよ。

 (やす)時間(じかん)(だれ)(はな)(ひと)()ないんだもの。

 いつも(やす)時間(じかん)(ほん)()んでいて、(たの)しくはあるんだけど、でもたまに、(こころ)にぽっかり(あな)()いたみたいに(むな)しくなるの。

 (なに)()りないって、そう(おも)っちゃうんだ。

 でも、(はなし)()わない(ひと)友達(ともだち)になっても、きっと(つか)れちゃうだけなんだよ。

 だからいいの。
 
 そもそも学校(がつこう)勉強(べんきよう)する場所(ばしよ)で、友達(ともだち)(つく)らなきゃいけないとかないもの。

 それに(わたし)一人(ひとり)時間(じかん)(わり)()きだし。

 (いま)(ほん)()んでいることだって、きっと未来(みらい)役立(やくだ)つの。

 きっとそう。

「その(かん)じ・・・出来(でき)なかったのか。」

「っいいじゃないですか。そもそも学生(がくせい)勉強(べんきよう)本分(ほんぶん)です。友達(ともだち)がいなくても学校(がっこう)には(かよ)えます。」

 (あわ)れまれているように(かん)じて、ムッとなって、(おも)わずツンケンした()(かた)になってしまった。

 友達(ともだち)()ないのと先生(せんせい)関係(かんけい)ないと(おも)う。

 そうズカズカと土足(どそく)()()んで()しくない。

 この先生(せんせい)(だれ)からも()かれているから、きっと、こんなこと(おも)ってる(ひと)がいるなんて()からないんだ。

 きっとそうなんだ・・・!

「・・・たしかに学生(がくせい)勉強(べんきよう)本分(ほんぶん)だ。だけど学校(がつこう)勉強(べんきよう)するためだけの場所(ばしよ)じゃないぞ?」

 先生(せんせい)言葉(ことば)(まゆ)をひそめる。

 学校(がつこう)勉強(べんきよう)する場所(ばしよ)だ。

 それ以外(いがい)(なに)があると()うのだろう。

学校(がつこう)は、人間関係(にんげんかんけい)(きず)(かた)(まな)()でもある」

 その言葉(ことば)にハッと()がついて、目線(めせん)()ろした。

 たしかに、学校(がつこう)社会(しやかい)(ちい)さくした、社会(しやかい)縮図(しゆくず)なんてよく()う。

 (わたし)は、そこからはみ()してしまっているのかもしれない。

「それに、勉強(べんきよう)だけじゃ、(つか)れちゃうだろ? 友達(ともだち)一人(ひとり)でもいるってだけで学校(がつこう)()くモチベーションも()がるってもんだ。
それに、この学校(がつこう)にいたっては友達(ともだち)()ないと(きび)しいイベントもあるしなあ。
一人(ひとり)ぐらい、勇気(ゆうき)()して(つく)ってみたらどうだ?」
 
余計(よけい)なお世話(せわ)です。」

 (かる)(おも)われている()がして、先生(せんせい)背中(せなか)をキッと(にら)んだ。
 
 勇気(ゆうき)()してって、そう簡単(かんたん)()わないで()しい。

 新崎先生(にいざきせんせい)みたいに(だれ)にでも気兼(きが)ねなく(はな)せる(ひと)だけじゃないんだ。

 (わたし)みたいに、すでにできてしまったグループの(かべ)()()えられない(ひと)だっている。

「あー・・・(わる)い。余計(よけい)なこと()ったか。そう簡単(かんたん)()うな、だろ?」

 くるりと、先生(せんせい)()(かえ)る。

 ふわりと茶髪(ちやぱつ)のかかった色素(しきそ)(うす)()は、(まど)からの(ひかり)()しこむと、琥珀(こはく)みたいに()(とお)って(わたし)()つめ(かえ)してくる。

 (にら)んでいたのをやめて、その()んだ()()ていたら自分(じぶん)(わる)いように(おも)えてきてしまうから、()()らした。

 駄目(だめ)だ、こんなことをしていたら印象(いんしよう)(わる)生徒(せいと)になってしまう。

 内申(ないしん)もきっと()がる。

「ははっ、(きら)われちまったかな。」

 そう()先生(せんせい)(おど)けたような雰囲気(ふんいき)も、(かな)しそうな雰囲気(ふんいき)両方(りようほう)()ちあわせていて、どちらが本心(ほんしん)()からない。

 この先生(せんせい)はいつもこうだ。

 飄飄(ひようひよう)としていて、(つか)(どころ)()い。

 ちょっと苦手(ニガテ)

「まぁ(いま)はいいか。よし、()いたぞ。ここだ。」

 先生(せんせい)はある教室(きようしつ)のドアに()をかける。

 ドアの(うえ)にあるプレートには(だい)38教室(きようしつ)()かれていた。
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