スクールアイドル防衛隊─通行人A子と弱虫王子―
 じゃあ、このままいけば、二人の糸は消えてしまうのかな・・・。

 別に私には関係ないのに、それは少し悲しいような気がした。

 赤い糸ってそんな簡単に消えてしまうんだ、なんて、ちょっと残念になったんだ。

 案外、私は赤い糸ってものに憧れていたのかもしれない。

 ・・・だって、ロマンチックじゃない。

 好きな人と、自分が、赤い糸で結ばれているかも、なんて。

 でも、そう考えてみると、やっぱり私に見えているのは“運命の赤い糸”ではないのかな。

 だって、運命の相手って多分、一人だけでしょう?

 だったら、消えるわけないもんね。

 ・・・でも、それだとしたら、本当に私の見えているものは何なんだろう。

 恋の赤い糸・・・なのかな。

 それに、この赤い糸、みんな小指に繋がっているけど、外国に行ったら足に繋がってたりするのかな?

 実は私、糸が見え始めたときに調べたことがあるんだ。

 “運命の赤い糸”っていうのは東アジアに伝わる伝承なんだって。

 由来はおそらく、中国の『太平広記(たいへいこうき)』に載っている『定婚店(じょうこんてん)』というお話。

 簡単に話すとね、名家の男の人が、あるお店で老人と出会ったの。

 その老人は、自分は冥界の婚礼を司る役人だと告げたんだ。

 男の人は、自分ととある家の縁談、つまり結婚の話がまとまるか聞いたの。

 そうしたら、老人は「お前の結婚相手はその家の娘ではない。野菜売りのばあさんの娘じゃ。」って言ったんだ。

 そして更に言うの。

「わしの仕事はこの赤い縄を、将来結婚する男女の足に結ぶことじゃ。お前の足もすでにその娘と繋がっておる。それ以外の人間と結婚するはずがない!」
 
 男の人は気になって、その将来の結婚相手の顔を見に行ったんだ。

 そうしたらね、痩せぎすでみすぼらしい赤ん坊だったんだって。

 男の人が求めてた結婚相手は良家の娘。

 そんなみすぼらしい赤ん坊が将来の相手なんて受け入れられなかったみたい。

 ひどい話でね、男の人はその赤ん坊を殺すことにしたの。

 殺したら運命も無くなるだろうって考えて。

 でも暗殺は失敗に終わった。

 その赤ん坊の額を傷つけただけだったんだって。

 それから、男の人は結婚することもなく数年が経ち、ある時上司に気に入られて、その娘さんを嫁に貰うことになったの。

 美少女だったみたいで、男の人は結婚を大いに喜んだみたい。

 でも、そのお嫁さんはなぜか、額に花子という飾りをつけて、お風呂のときにも剥がそうとしなかったんだって。

 それが気になって聞いてみれば、お嫁さんは、昔暴漢に刺されてしまって痕が残ってしまっているのだと告げたんだ。

 男の人は、昔殺そうとした赤ん坊のことを思い出して、聞いてみれば、彼女がその赤ん坊だったことが分かったの。

 その後、お嫁さんはその事件について許してくれて、運命の巡り合わせって不思議ね、って話になったみたいなんだけど・・・。

 なんだか、私は納得できない話だったなぁ。

 だって、男の人酷すぎるじゃない。

 みすぼらしい赤ん坊が結婚相手だなんて許せないからって、罪もないのに殺そうとしたり、美少女になったからって手のひらを返して結婚を喜んだり、私だったら絶対許せないよ。
< 54 / 60 >

この作品をシェア

pagetop