スクールアイドル防衛隊─通行人A子と弱虫王子―
 まぁでも、時代を考えると、納得せざるおえないんだけどね。

 昔は男の人の権力のほうが強くて、女の人は政略結婚の為の道具みたいに扱われていた時代だもの。
 
 私はふと、斉藤さんの足元を見てみた。

 目を凝らしてみても、やっぱり赤い糸は見えない。

 その『定婚店(じょうこんてん)』のお話では、結婚する人どうしの足に赤い縄が巻かれているって話だったでしょ。

 だから、小指から赤い糸が伸びるっていうのは、日本だけの話なんだって。

 黒板に視線を戻して、頬杖をつく。

 ・・・まぁ、でも、あの二人がどうなろうと私に関係ないし。

 鞄から小説を取り出して、開く。
 
 そのまま本の世界に浸って、先生が来るのを待った。

 4時間目の終了のチャイムが鳴って、お昼休みの時間。

「相模さん、呼ばれてるよ!」

 自分の席でお弁当を取り出した所で、クラスメイトの女の子に呼ばれた。

 確か・・・松本さんだったっけ。

 くるんと外にカールした茶色っぽい髪の特徴的な可愛い子だ。

「え、あ・・・。」

 教室の外を見れば、そこには、スラッとした手足に高身長、着崩した服装、昨日会った風紀委員の、ヒーロー先輩じゃない方・・・あ、そうだ、天城先輩!

 天城先輩が、私に向かってひらっと手を振った。

 天城先輩が・・・なんで?
 
「あの、ありがとう。」

 とりあえず松本さんにお礼を言って、天城先輩に近づく。

「あ、英子ちゃん。」

 突然の名前呼びに私が固まっていると、天城先輩はへにゃっとした笑顔を浮かべた。

「ごめんなぁ突然呼び出して。今から食堂、一緒に来てくれる?」

「食堂、ですか。でも私・・・。」

 今日、お弁当なんだよね。

 困ったなぁ、食堂でお弁当は食べちゃ駄目だった筈なんだけど。

「ん? どしたん?」

「私、今日お弁当だから・・・。」

「あ~、そうなんか・・・。」

 天城先輩は「んー。」と唸ってから「そうやな。」と呟いた。

「大丈夫やで。だから英子ちゃんもお弁当持って一緒においで。」

「え?」

「いいから〜ほら、はやく。」

 言われるがままにお弁当を取って、天城先輩の元に戻る。

 大丈夫って、何がなんだろう・・・?

「じゃ、行こっか。」

「あっ先輩・・・っ!」

 先輩が先に行ってしまって私は慌てて後を追った。

 その高い身長はどこにいても目立つけど、足が長いからか歩く速度が速い。

 早歩きで追いかけていると、彼はふと私の方を振り返って眠そうな目を少し見開いた。
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