スクールアイドル防衛隊─通行人A子と弱虫王子―
「あ、英子ちゃんって・・・そんなに小さかったんやなあ。」

 まじまじと言われたものだから、ちょっと、カチンときちゃった。

 小さいって、馬鹿にされている気がして。

 私って、156cmだから、そんなに小さくはないんだよ?

 クラスでも普通くらいだし、日本人女性の平均ぐらいだろうし。

 だから、天城先輩が大きすぎるだけなんだよ。

 まぁ多分、本人は馬鹿にした気とか全然ないと思うんだけどね。

 だって・・・何も考えてないような顔してるもん。

 今だって、ぽけーって眠そうな顔してるし。

 悪意ゼロって感じ。

 だからこそ、(タチ)が悪い!

「ごめんなあ、足早かったやろ。」

 けれど、速度を落として私の隣を歩く姿に、ムッとしていた顔が解けてキョトンとしてしまう。

 あれ? 優しい・・・かも?

「あ、いや、大丈夫・・・です。」

「そう? よかったぁ。」

 そう、ふにゃりと溶けるような笑顔に、肩の力が抜けた。

 この人は、本当マイペースというか、自分の空気を持ってる人だなぁ。

 ペースにのまれて、最初ちょっと緊張してたのがもう無くなっちゃった。

「それで、あの、どうして食堂に?」

「ん? ああ、ちょっとみーくん関係でな。」

 みーくんって……花菱先輩のことかな?
 
「また、何かあったんですか?」

「んーん? 昨日、にいちゃん先生に言われたやろ。おれらはチームAで、側に居とけって。だから、一緒に昼食べようって話になって、英子ちゃんも誘おうって。みーくんは場所取りしてくれてるわ。」

 花菱先輩が、場所取り・・・。

 人がその場所に集まってる様子が想像できて、苦笑いをする。

 役割逆の方が良かったんじゃ・・・そこまで考えて、私の方に花菱先輩が来たらクラス中の好奇の視線を浴びそうだなぁと気がついて、少しゾッとした。

 あ・・・いや、それならこれでよかったかも。

 でも、さっき言った通り私、お弁当なんだけど・・・。

「あの、私お弁当・・・。」

「ん〜大丈夫やって。考えがあるから。」

 考えって? 
 
 ルールを破るのは私嫌だよ?

「ま、とりあえず着いてきぃ? 騙されたと思って。」

 少し納得がいかなかったけど、隣の天城先輩の笑顔を見ていたら、まぁいっかって気分になっちゃうから不思議だ。

 だってこの人、悪いこと何もできなさそうな顔してるもの。

 んーなんて言えばいいのかな・・・善人顔?

 でもこの言葉は悪いイメージあるなぁ。

 あ、そうそう! 癒し系!

 癒し系なんだ!

 この前ニュースで見たんだ。

 最近の流行りの男性(メンズ)は癒し系なんだって。

 その特徴に当て嵌まってる気がする!
 
                
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