スクールアイドル防衛隊─通行人A子と弱虫王子―

犯人を探せ!

「とりあえず、今日の放課後に写真部に凸ろーか。」

 天城先輩は焼きそばパンを食べ終えたらしく、そう言う。

 とつる・・・?ってなんだろう。

 とつ・・・とつ・・・突撃?

「みーくんから聞いてんで。確かに写真部は怪しいよなぁ。よう気づいたわ。」

 天城先輩は「英子ちゃん凄いわぁ。」ってニコニコしながら言ってきて、それに花菱先輩もうんうんって頷いてるから、私は恥ずかしさと嬉しさを感じながら少し俯いた。
 
 だめだな、口角上がっちゃう。

「花菱先輩の知識あってのことですよ。」

「そんなことないって。現にオレは思いつかなかったし。灯台下暗しって言うのかな、確かに写真をあれだけ撮りなれてるなら写真部が一番怪しいよなー。」

 そう感心した様子だった花菱先輩はお茶をごくりと飲み干してから、ふと、宙を見つめた。
 
「・・・そういえば1年のとき、写真部の人にモデル頼まれたことあったっけ。兄さんに止められてたから断ったけど・・・。」

 思い出した様子でぽつぽつと呟く。

「コンクールに出す用にポートレートを撮りたいって、今思えば申し訳ないことしたなぁ。」

 その後不安そうな顔になって、「まさか・・・あのとき断ったから?」と真剣に考え始めるものだから、いやいやいや、と横に首を振った。

 それは天城先輩も同じ気持ちなようで、ぽわぽわとした雰囲気を纏った彼も今は少し呆れ顔だ。

「みーくん、流石にそれはないわ。だとすれば八つ当たりもいいとこやし、第一、たった一回断ったくらいで・・・。」

 そこまで天城先輩は言ったものの、花菱先輩に見つめられて、言葉が止まる。

「・・・いや、あるかもしれへんな。」

 えっ!?

 まじまじと花菱先輩見ながら天城先輩が呟いた言葉に、耳を疑う。

 思わず彼の顔を2度見すれば、天城先輩は苦虫を噛み潰したような、これまでに見たことのない顔をしていた。

 驚く私の視線に気づいたらしい天城先輩は、私を見てから、あからさまに花菱先輩に目線をやる。

「だって、このみーくんやもん。」

 その目の指し示す所にあったキラキラ輝く美貌に、すっと表情筋の力が抜けるのを感じた。

「フツーにありそうやろ。」

 あー・・・たしかに。
 
 普通の人なら一回断ったくらいでストーカーになることはないだろうけど、そもそも前提条件が違った。

 相手はこの絶世の美貌を持つ花菱先輩なのだ。

 そう考えると、残念なことに全然ありえる話だった。
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