スクールアイドル防衛隊─通行人A子と弱虫王子―

個性豊かな風紀委員

 ガラリとドアを()けた先生(せんせい)(つづ)けば、そこには4つ(つくえ)()わされて()いてあった。

 その(まわ)りを(かべ)()せられた(つくえ)(かこ)んでいて、(うえ)沢山(たくさん)(もの)がゴチャッと乱雑(らんざつ)()かれている。

 1(だい)のパソコンと、トランプ、ウノみたいなボードゲーム、ダンボールの(はこ)三脚(さんきやく)(みどり)(ぬの)物干(ものほ)竿(ざお)、ダンベル・・・なんというか(まと)まりが(まつた)くない。

(つくえ)のないところには大量(たいりよう)資料(しりよう)っぽいものが(はい)った本棚(ほんだな)とロッカー、その(となり)のは・・・え、簡易更衣室(かんいこういしつ)!?

 (ほか)にも色色(いろいろ)()かれているから、教室(きようしつ)というかは部室(ぶしつ)・・・いっそ物置(ものおき)のようだった。

 物置(ものおき)にしては、生活感(せいかつかん)というか、最近(さいきん)使(つか)われた(かん)じの()(かた)だけど。

 ホコリもつもってなさそうで、(つくえ)(あか)るく、新品(しんぴん)のように見える。

 やっぱり部室(ぶしつ)(なに)かなのかな。

 ()かれているものの種類(しゆるい)豊富(ほうふ)すぎて、どの部活(ぶかつ)かは()からないけど……そもそもこれ、校則(こうそく)大丈夫(だいじようぶ)なのかしら。

「やっぱりまだ(だれ)()てないか。まぁ(すわ)ってくれ。紅茶(こうちや)大丈夫(だいじようぶ)か?」

 先生(せんせい)はカチリと電気(でんき)()け、どこからか湯沸(ゆわ)かしポットとティーセットを()()して、(つくえ)(うえ)()いた。

 ええぇ・・・。

 なんでここに湯沸(ゆわ)かしポットやティーセットが()いてあるのだとか、なんで()たり(まえ)のようにいれようとしているのだとか、(だれ)()てないのかってことは(だれ)()予定(よてい)だったのかだとか、()きたいことは(やま)ほどあるのだけど、まずは。

「あの、それで(はなし)って?」

 紅茶(こうちや)をいれようとティーバッグの包装(ほうそう)(やぶ)っていた先生(せんせい)()いかけた。

 先生(せんせい)作業(さぎよう)をやめずに、湯沸(ゆわ)かしポットのコンセントをさしながら(こた)える。

「ん、あー、その(まえ)に、1つ()いてもいいか?」

 ピッと湯沸(ゆわ)かしポットのボタンを()して、ようやく(わたし)()た。

 その()(わたし)(こころ)(そこ)見透(みす)かそうとしているみたいに()んでいて、真剣(しんけん)だ。

 いつもなんだかんだ(わら)っていて、ふざけているような先生(せんせい)の、(はじ)めて()表情(ひょうじょう)だった。

「クラスの藤森(ふじもり)のこと、お(まえ)どう(おも)う?」

 一体(いったい)どんな質問(しつもん)をしてくるのだろう、なんて身構(みがま)えていたけれど、その内容(ないよう)があまりにも突拍子(とつぴようし)がなさすぎて、ぽかんとしてしまった。

藤森(ふじもり)くん、ですか。」

 藤森(ふじもり)くんは、(わたし)のクラスで先生(せんせい)(おな)じくらい女子(じよし)人気(にんき)のある生徒(せいと)だ。 

 といっても、(かれ)社交的(しやこうてき)とかムードメーカーだとかそういうわけじゃない。

 この人気(にんき)のあるっていうのは、モテる、って意味(いみ)(ほう)人気(にんき)だ。 

 クラスで女子達(じよしたち)がヒソヒソと(はな)していたし、容姿(ようし)印象的(いんしようてき)だったので(おぼ)えている。

 だけど、そんな(かれ)(わたし)がどう(おも)ってるかなんてどうして()りたいんだろう。

 (わたし)藤森(ふじもり)くんについて、(あら)めて(おも)(かえ)した。

 キリリと()()がった()(なが)()黒縁(くろぶち)のメガネをかけていて、(うす)(くちびる)はいつもキュッと(むす)ばれているから、なんだか無愛想(ぶあいそう)印象(いんしよう)

 でも(たし)かに(かれ)()()はかっこいい。

 背筋(せすじ)はいつもピンと()っていて、全体的(ぜんたいてき)(せん)(ほそ)い。

 (かみ)がサラサラしていて、()普通(ふつう)だけど(かお)(ちい)さいからスタイルが()いんだ。

 クラスの女子(じよし)(さわ)ぐのも()かる()がする。
  
 まるでモデルみたいな(ひと)だもの。

 あ、そういえば、かなり潔癖症(けっぺきしょう)にも見えたかも。

 いつも(わたし)朝早(あさはや)くに学校(がつこう)()くんだけど、その(あと)()藤森(ふじもり)くん、毎朝(まいあさ)除菌(じよきん)シートで自分(じぶん)(つくえ)()いてるんだ。

「・・・・・・潔癖症(けつぺきしよう)?」

 とりあえず、それっぽい(こた)えが()つかったから(こた)えると、先生(せんせい)意外(いがい)だとでも()うように(まゆ)()げた。

「・・・(おどろ)いた。まさかそんな(こた)えが(かえ)ってくるなんてな。まぁたしかにアイツは潔癖症(けつぺきしよう)()がある。プリントを(まわ)すのでさえ若干(じやつかん)(いや)がってる。」

 驚き(おどろき)情報(じようほう)だった。

 プリントすら(まわ)したくないって重症(じゆうしよう)だ。

 学校生活(がつこうせいかつ)する(うえ)でかなり大変(たいへん)そう。
 
 潔癖症(けつぺきしよう)大変(たいへん)なんだな、なんて(すこ)同情(どうじよう)していると、先生(せんせい)はボソリと、どこか(うれ)しそうに口角(こうかく)()げて(くち)にした。

合格(ごうかく)。」

 ゴウカク? なんてオウム(がえ)しをしそうになるのと、ガラガラガラッと(いきお)()くドアが(ひら)くのは同時(どうじ)だった。

「ゴメーン! センセー()ったぁ!?
掃除(そうじ)長引(ながび)いちゃってさぁ・・・って、あれ? その()は?」

 教室(きようしつ)にドアを()けた子の、(おんな)()にしては(すこ)(ひく)めな(こえ)元気良(げんきよ)(ひび)く。

 その姿(すがた)()て、うわ、と(くち)にしそうになるのを必死(ひつし)(こら)えた。
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