スクールアイドル防衛隊─通行人A子と弱虫王子―
 その()は、(あき)らかに()めている橙色(だいだいいろ)(かみ)をシュシュでポニーテールにして、制服(せいふく)のスカートからは(ふと)ももが(のぞ)いている。

 その通学鞄(つうがくかばん)には(こぶし)2つぶんほどの(おお)きなテディベア。

 くるんと(うえ)()いた睫毛(まつげ)はまばたきするたびにバサバサと()れて、(おと)()るようだった。

 苦手(にがて)なタイプだ。

 そう(おも)った。

 この学校(がつこう)は、服装(ふくそう)(かん)してはとても自由(じゆう)だ。

 生徒(せいと)個性(こせい)尊重(そんちよう)するだとかなんとか・・・だから、(すご)(ゆる)いの。

 制服(せいふく)はある程度(ていど)着崩(きくず)してもいいし、(かみ)()めていても(おこ)られない。

 入学式(にゆうがくしき)とか、ちゃんとしたイベントのある()だけしっかり(ととの)えていればいいみたい。

 だからこの()校則(こうそく)(やぶ)っているわけではないのかもしれないけど・・・それでもこれって。

「お、ミヤか。大丈夫(だいじようぶ)だ。集合時間(しゆうごうじかん)には()()ってる。」

 先生(せんせい)がグッと親指(おやゆび)を立てれば、その()は「よかったぁ、セーフ!」って()いながら(かばん)(つくえ)()いて、(わたし)をジッと()た。
  
 カラーコンタクトをしているのか、()(いろ)もかなり(あか)るい。

 (あたま)(うえ)から爪先(つまさき)まで、()(まわ)すように()られて、(すご)居心地(いごこち)(わる)かった。

 なんなのこの()

「あ、もしかして(あたら)しく(はい)ってくる()!?」

 突然(とつぜん)(おお)きな(こえ)()すものだから(おどろ)いて、(かた)がビクッと()がった。

 その様子(ようす)()て、その()(つめ)がオレンジに()まった両手(りょうて)をパチンと()わせる。

「ごめん、(おどろ)かせちゃったっ?」

 そうして(つくえ)(まわ)()んで、(わたし)(ちか)づいてきながら(はな)(はじ)める。

「ねえあんた名前(なまえ)は? あ、オレはミヤって()んで! (かみ)リボンでとめてんのチョーかわいい! お、ネクタイちゃんと()めてるんだ。(いき)(くる)しくない? オレそれ苦手(にがて)でさぁ。」 

 (わたし)(なに)()えない(あいだ)に、その()弾丸(だんがん)のようにペラペラ(はな)す。

 なに、なに、なに!?

 (かお)もどんどん近づいてきて、もう20センチあるかないかだった。

 あまりにも(かお)(ちか)いのでのけ()っていったところで、先生(せんせい)がその()(かた)()()く。

「ミヤ、ステイステイ。相模(さがみ)ビビってるから。とりあえず紅茶(こうちや)でも()んで()()け?」

 先生(せんせい)がカチャリとティーセットをその()(まえ)まで()()すと、「はあい」って()いながら、ようやくその()()まって、椅子(いす)(すわ)った。

 た、(たす)かった。

 (かお)距離(きより)(とお)のき、ほっと(いき)をつく。

 この()、ミヤって()、なんというか、(おも)っていたより(すご)いフレンドリーだし、色色(いろいろ)と・・・個性強(こせいつよ)い。

 自分(じぶん)のことオレって()んでるみたいだし。

 でも、チャラチャラしてるというか、キラキラしてるというか、ちょっと(こわ)くて(はな)しかけにくい印象(いんしよう)だったんだけど、先生(せんせい)には素直(すなお)(したが)ってるしフレンドリーだしで、(すこ)しマシになった。

 (おも)っていたより、(こわ)()じゃないかも。

 ミヤさんはさっきまでの対応(たいおう)(うそ)みたいに(しず)かに、先生(せんせい)のいれた紅茶(こうちや)()んで、カタッとカップを()く。

 そうして(わたし)()(なお)ると、キラキラ(かがや)(ひとみ)()つめて、ニコッと(わら)った。
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