スクールアイドル防衛隊─通行人A子と弱虫王子―
「きみ、サガミっていうんだ!」

 その()があまりにも純粋(じゆんすい)で、()()だけで一方的(いつぽうてき)苦手(にがて)だと(おも)っていたのが(もう)(わけ)なくなって、()()らした。

 やっぱり、(おも)っていたより(こわ)くない。 

「このギャルっぽいのはミヤだ。」

「みんなからはミヤっちとかミヤって()ばれてる! ネクタイ(あか)いし1(ねん)だよね? オレも1(ねん)だからタメでいーよ!」

 ギャルはなんとなく()かるけど、“タメ”ってなんだろう・・・?

 どう(かえ)せばいいか()からなくてドギマギしてしまう(わたし)を、ミヤさんは人好(ひとず)きしそうな(かお)()つめてくる。

 そんな様子(ようす)先生(せんせい)見兼(みか)ねたようで、コツコツと(つくえ)(たた)いた。

 (くち)(かたち)が「()()(シヨウ)(カイ)」と(うご)いた。

 はっとなって(あわ)てて(くち)(ひら)く。

(わたし)相模(さがみ) 英子(えいこ)です。どうぞよろしく・・・?」

 はたしてこれから(さき)()うことなんてあるのかな。

 そんな(こと)(かんが)えていくと自然(しぜん)語尾(ごび)疑問符(ぎもんふ)がつく。

 こんなにタイプの(ちが)()(わたし)が・・・?

「よろしく、えいこりん!」

 (わたし)がそんなことを(かんが)えているとは露知(つゆし)らず、ミヤさんは(わら)っていた。

 えいこりんなんて、(へん)なあだ()

 ()ばれなれないし(へん)だしで微妙(びみよう)(かお)になってしまう。

 うーん、(わる)()じゃなさそうだけど、やっぱり()わなそう・・・。

 そんなことを(かんが)えていると、またガラリとドアの(ひら)(おと)がした。

()()ったか!?」

 そこには、(はな)(うえ)絆創膏(ばんそうこう)()った少年(しようねん)(あせ)だくで()っていた。

 (からだ)つきがガッシリしていて(こえ)(ふと)いから体育会系(たいいくかいけい)印象(いんしよう)だけど、制服(せいふく)はカッチリ()こなしている。

 ネクタイの(いろ)(あお)いから、2年生(ねんせい)だと()かった。

「おー、ヒイロか! ギリセーフだ。ナイスファイト! とりあえず(すわ)りな?」

 先生(せんせい)(せき)()けば、(かた)(いき)をしながらその先輩(せんぱい)(すわ)る。

「はぁっはぁっ・・・ありがとうございます。すみません先生(せんせい)、5分前(ふんまえ)集合(しゆうごう)常識(じようしき)だってのに!」

 その(かお)はどこか(くや)しげで、この(ひと)(すご)真面目(まじめ)生徒(せいと)なんだなって()かる。

 だって、そんな5分前(ふんまえ)集合(しゆうごう)できなかったくらいでここまで(くや)しそうにする(ひと)()たことがなかったもの。

()()ってるんだし、いいじゃねえか。それにお(まえ)(こと)だからまぁた人助(ひとだす)けでもやってたんだろ? あ、それ(あつ)いから()をつけろよ。」

 先生(せんせい)()()した紅茶(こうちや)()んだ先輩(せんぱい)は、かなり(あつ)かったようで(かお)(しか)めた。

 あー・・・ちょっと忠告(ちゆうこく)(おそ)かったみたい。

 その先輩(せんせい)(すこ)ししてから(いき)()()し、ようやく(わたし)()づく。

 ()があったので、なんとなく会釈(えしやく)をした。

先生(せんせい)、そいつは?」
 
相模(さがみ)新一年生(しんいちねんせい)だ。」
 
「ああ! もしかして(れい)の!」

 ・・・なんなんだろう、この反応(はんのう)

 どうして(みんな)(わたし)がいることの()()れが(はや)いというか、納得(なっとく)した(かん)じなんだろう?

 それに、(れい)のって・・・。

「ハルマは?」

()てないっすね。」

「またかぁ? アイツ今回(こんかい)はどこで道草(みちくさ)()ってるんだか・・・。まぁいい、それなら(さき)(はじ)めるか。」

 先生(せんせい)椅子(いす)()()ってきて、(すわ)る。

 お誕生日(たんじょうび)(せき)だ。

 その(せき)()きそー、なんて(おも)っていれば、先生(せんせい)(すわ)ったまま(ちか)くのガラス(だな)からファイルを()()して、(つくえ)()いた。

端的(たんてき)()うと、相模(さがみ)、お(まえ)風紀委員(ふうきいいん)(はい)って(もら)いたいんだ。」

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