憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました

その先にあるもの



(何年ぶりだろう……)

義兄の副院長室も敷居が高くてなかなかは入れなかったが、院長室はもっと遠い場所だ。
たしか五年前に手術を受けた後に一度、研修医として働く時に一度訪ねたきりだった。

応接室には、立花家の人々が集まっていた。

院長のデスクに父の義実。
黒皮の応接セットには義母の博子と裕実が並んで座っているし、ひとり掛けのソファーには克実が憮然とした顔で座っていた。
頼りになる義兄嫁の理香の姿はなかった。お産でもあるのだろう。

「遅くなりました」

入るなり、由美は頭を下げて謝った。
まだ約束の五分前だが、自分が一番遅かったのだから仕方がない。

「お母さん、由美まで呼びつけて何事ですか?」

克実も由美が呼ばれている理由を聞かされていなかったらしい。
忙しい人だから、少しイラついているようだ。

「今日は、彼女にも関係ある話だから呼んでるの」

博子が妙に棘のある言い方をするので、由美は嫌な予感がした。
やはり直哉とのこととしか思えなかった。



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